2011 Fiscal Year Annual Research Report
命令文書からみた宋代「君主独裁制」成立過程についての研究
Project/Area Number |
11J03122
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 猛 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蔡京 / 徽宗 / 「君主独裁制」 / 論対 / 転対 |
Research Abstract |
23年度は、従来から進めてきた北宋末、徽宗朝の察京政権における政治過程研究を継続し、その成果を論文にまとめ、『東洋学報』93-4に掲載された。具体的な内容としては、察京の第二次当国開始直後に起こった謀反事・件では、それに連座して多くの士大夫が処分されたが、その中には王安石の姻戚や票京の弟など、中央政府の大物も含まれており、他ならぬ察京自身もその嫌疑がかけられかねない状態であった。しかし彼はこれを政治的圧力によって封殺した上、逆に政敵の攻撃に利用してもいた。その中では皇帝徽宗の動きすら封じる行いがあり、これを機に徽宗は政治的意欲を失い、文化行政にのめり込んでいく。この謀叛事件は史書には特筆大書されないが、実は当時の政治的趨勢に大きな影響を与えたものだったことを指摘した。 またもう一つの課題である宋代「君主独裁制」と文書制度に関して、皇帝との謁見制度(謁見時には文書を提出する)について、特に一般官僚が順番に皇帝に対面できる制度である輪対・次対・転対制度について研究を進めた。制度の実際面を探るため、謁見時に提出する文書を『国朝諸臣奏議』『歴代名臣奏議』や、『全宋文』を参考に各個人の文集等から拾い集め、その内容を吟味した上で、これが出されたときの各人の身分、政治状況を合わせながら分析を進めている。現在での見通しとしては、厳密にはこの制度のうち、次対・転対と輪対とは別のものであり、前者は北宋から南宋にかけて維持されていたが、後者は南宋に入ってから出現したもののように窺える。その原因が何なのか、この制度が果たした役割とは何なのかについて考察を継続し、その成果を次年度中に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の研究目的は大きく二つあり、一つはこれまでのように徽宗朝票京政権に関する政治過程研究を継続することで、もう一つは宋代「君主独裁制」に関する文書制度の解明であった。前者については研究実績の概要に記した通り、第二次当国期に発生した謀叛事件と、その審判の過程で起こった政治的波紋について成果を発表することができた。後者についても輪対・転対制度についての研究を進展できており、間もなく成果が発表できると思われる。以上のことから研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に着手した北宋時代の謁見制度とそれに付随する文書制度についての研究を継続する。その成果については国内・国外における学会にて口頭発表する予定である。これと合わせて、蔡京政権についての政治過程研究を進展させ、少なくとも靖康の変に至るまでの大まかな見通しを立てた上で、これまでの研究を時系列に沿ってまとめる予定である。さらに並行して進めている、北宋末以降の御筆関係資料のデータベース作成についても、編纂史料だけでなく、碑刻など各種資料をできる限り網羅していきたい。
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Research Products
(1 results)