2011 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期外務省における「反米派」グループの形成と展開
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11J03217
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渡辺 公太 神戸大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 戦間期 / 外務省 / 革新派 / アジア派 / 石井菊次郎 |
Research Abstract |
本研究は、日米両国の一次史料を用いたアーカイバル手法によって、戦間期外務省における対米強硬派の系譜とその政策理念を実証的に解明することを目的としている。本年度は主として日米両国の公刊・未公刊の一次史料収集に努めた。特にスタンフォード大学フーバー研究所での史料調査では、Stanley Hornbeck Papers,Maxwell Hamilton Papers,Joseph Ballantine Papersなどの史料を重点的に調査した。これらの史料は従来、日米交渉、特に開戦外交の研究に利用されることが多かったが、本調査では満州事変から日中戦争までの期間を主たる対象に据えた。その結果、対日政策に大きな影響力を持った米国高官の原理原則と、日本側外交官らが抱いた大陸進出の構想との間で埋まることのないギャップの具体的根拠が得られた。 またこうした史料調査と;並行して、戦間期における外交官の抱いた対外政策を人口論という視点から分析することを試みた。具体的には第一次世界大戦時に外務大臣も務めた石井菊次郎を事例として、石井が「持たざる国」という理由で日本の対外拡張を正当化し、その根拠として当時国内で活発に議論されていた人口論を用いたということを明らかにした。これまで親米派・国際協調派と評価されてきた石井の新たな姿を浮き彫りにしたこの結果は、学問上の功績として強調できよう。なおこの分析結果についてはBritish Association for Japanese Studiesのシンポジウムで口頭報告し、それを基に学内紀要に論文を投稿した。 他方、他の外交官、特に満州事変以降に台頭する対米強硬派勢力の「革新派」や「アジア派」と呼ばれる中堅官僚らの対外構想と政策決定との関連生についても史料収取を始めており、博士論文執筆に向けた分析枠組みの設定に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画としていた日米両国の史料収集、および戦間期の外務省官僚らの対外政策の根拠となった理念・思想の分析に着手し、学会報告や論文執筆によって一定の成果を挙げることができたため、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、戦間期外務省研究で最も重要となる「革新派」や「アジア派」といった対米強硬派グループの対外構想と政策決定の関連性、および総合的な外務省研究としての省内系譜をいかに設定するかが問題となる。また本年度および次年度で収集予定の米国側一次史料により、米国側の対日政策をいかに有機的に関係させられるかが重要になってきている。そのために史料収集と並行してマルチ・アーカイバル手法や国際関係理論を応用した国内外の先行研究を通じ、議論に論理的な意義づけを与えて研究を進めていく。
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