2012 Fiscal Year Annual Research Report
非整数階微分モデルを用いた地殻構造の効率的推定と地殻エネルギーシステムの最適設計
Project/Area Number |
11J03250
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 杏奈 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地熱開発 / 還元井の設計 / 貯留層解析 / 最適化問題 / 非整数階微分 / 物質移動モデル |
Research Abstract |
本研究は、地熱の持続性維持のための最適な還元井の設計の方法論の構築を目指す。 研究課題(1)非整数階微分を含む物質移動モデル構成パラメータに基づく大局的な地下構造推定法の構築数値解析により、non-Fickian挙動がき裂寸法のフラクタル性に起因していることを明らかにし、fADE構成パラメータとフラクタル次元との関係を明らかにした。さらには、多変量解析を実施することによりfADE構成パラメータによってフラクタル次元を定式化することに成功した。これにより、トレーサー応答に基づいてフラクタル次元を推定できることが示唆され、地下構造推定が可能となる。 研究課題(2)地層温度分布に基づく局所的な地下構造の決定 温度検層データを用いて対象領域の温度データの補間をすることにより、逆解析に必要な連続的な温度分布を取得する。実際のフィールドの温度検層データに適用し、妥当な補間法についての検討を行った。つづいて、き裂ネットワークモデルと熱応答の計算を組み合わせたプログラムコードの作成を行った。現在は、き裂ネットワークモデルの逆解析を実施している段階であり、地層温度分布に基づく地下構造の推定手法の構築を着実に進めることができている。 研究課題(3)流体・熱移動解析による還元井設計の方法論の構築 fADEモデルを用いることによって、坑井間距離を変化させた場合のトレーサー応答を従来モデルよりも精度よく推定することが可能となることを示した。この結果は,複雑なき裂分布を有する貯留層であったとしても,その分布の特徴が対象領域内で同じであれば,fADEモデルを用いることによって,スケールに依らずに物質移動挙動を表現できることを示唆している。さらには、トレーサー応答に基づいた温度応答予測モデルを導出することにより、断裂型貯留層における熱移動を表現可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題(1)から(3)を通し、トレーサー応答と温度検層データに基づいてき裂構造を推定する手法の構築に必要な知見の取得ができており、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題(2)に関しては、効率的な逆解析手法についてより考察が必要である。また、フィールドデータと照らし合わせることにより、本手法の妥当性を検討する予定である。研究課題(2)については、数値解析との結果を比較することにより提案する熱移動モデルの検証をすすめる。
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