2011 Fiscal Year Annual Research Report
コーン種皮バイオマスの機能特性を付与する化学構造と物性の相関
Project/Area Number |
11J03259
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 有希 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | トウモロコシ果皮 / アラビノキシラン / βグルカン / 尿素水酸化ナトリウム混合溶媒 |
Research Abstract |
本年度の研究実績として以下の2つの結果を得た。 (1)トウモロコシの5種10栽培品種の果皮について多段階的抽出溶媒による細胞壁成分の可溶化を行うことにより、世界で初めて細胞壁構成多糖成分の品種間差を詳細に明らかにすることが出来た。また、SEMによる品種ごとの果皮形態観察をあわせて行った。その結果、品種間におけるトウモロコシ果皮の組織構造及び組成・糖組成は酷似していることが明らかとなった。全品種の果皮に酸性アラビノキシランが主要構成多糖(約60%)として含有されており、本研究は構成多糖が環境ストレスへの防御機構として機能している可能性を提示した。以上の結果により、H23年度の研究実施計画の目標として挙げた、構成成分の決定、種皮の組織構造の解析を達成できたと考えている。 (2)トウモロコシ果皮多糖成分の新規溶剤として、尿素・水酸化ナトリウム混合溶媒の効果を検討した。その結果、新規溶剤の最適混合比6M尿素2wt%水酸化ナトリウム溶液を用いると、トウモロコシ果皮の多糖成分の抽出に効果的であることを示した。新規溶剤により可溶化した多糖成分はアラビノキシランとβグルカンが主要な構成成分であり、フィルム形成能を示した。これらの多糖の配合比を変化させることにより、バイオフィルムの形成能を調節することが可能であり、得られた多糖フィルムを引張り試験により物性測定を行った結果、アラビノキシランは硬さと脆弱性をフィルムに付与し、βグルカンは物理的強度と弾性を付与することが明らかとなった。これらの成果は、研究実施計画の目標として挙げた、物理的特性の数値化を行うとともに、次年度以降の新規な物性を有する材料開発への基礎的データとなるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度の研究目標として挙げていた3点(構成成分の決定、種皮の組織構造の解析、物理的特性の数値化)は、上記に記したように達成できたと考えている。以上のことより、現在までの達成度として、当初の計画通り、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策として以下の2点を挙げる。 (1)H23年度において物理的特性の数値化としては、2種類の多糖間相互作用による物理的強度への影響を明らかとした。今後、より詳細なトウモロコシ果皮の物理的特性を調べるため、調湿実験による果皮の水分特性を評価する一方、物理的強度を測定する方法を検討していく。得られた結果から、重回帰分析等の統計手法を用いて、その物理的特性に寄与する構成成分を同定する。 (2)トウモロコシ果皮多糖成分の新規溶剤として尿素・水酸化ナトリウム混合溶媒による詳細な効果を検証する。また、抽出された主要多糖の分画を行い、単離精製した多糖について構造解析を行う。単離精製工程には、沈澱法、酵素処理、液体クロマトグラフィーなど様々な分離技術を駆使して、その達成を図る。
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