2011 Fiscal Year Annual Research Report
スーダン共和国におけるクク人の「避難の経験」と宗教
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11J03398
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
飛内 悠子 上智大学, グローバル・スタディーズ研究科, 日本学術振興会特別研究員(DC2)
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Keywords | 南スーダン / スーダン / ウガンダ / クク人 / 避難民 / 難民 / キリスト教 / リバイバル運動 |
Research Abstract |
報告者は2011年4月-7月にこれまでの調査の整理と口頭発表を行い、得られたコメントを生かして論文投稿を行った。8月から南スーダンに渡航、まず首都ジュバにおいてハルツームからの帰還民に対する生活状況などのインタビュー、及びクク人が運営する聖公会ゴシェン教会において定点観測を行った。結果、ハルツームで創られた聖公会を通したクク人のネットワークがジュバでも生かされていることや、彼らが「南スーダンのキリスト教徒」として生きる意味を見出していく過程などが確認された。 10月からはカジョケジ郡に滞在し、聖公会カジョケジ教区の歴史、運営状況、及びクク人の日常生活と宗教の関係に関するインタビューと参与観察を行った。結果、人々が第一次内戦時にウガンダに避難し、そこで聖公会のリバイバル運動と出会ったことによってキリスト教信仰を深めてきたこと、そしてキリスト教が社会的規範となりつつあるが、人々がそれをクク固有の文化であるとは考えていないことなどが明らかになった。 2012年2月からスーダン共和国ハルツームに渡航し、南部人の状況に関する調査を行った。結果南部人の帰還によって圧倒的少数となったキリスト教徒たちが自分たちの信仰を保とうとしている状況、そして残った人々の帰還への意思決定の過程などが明らかになった。 3月にはウガンダ共和国アジュマニ県においてクク人の宗教生活に関する調査を行い、彼らがハルツームとは異なる教会運営を行い、それが彼らのキリスト教観に影響を与えていることを明らかにした。 このような報告者の研究成果は、これまで先行研究において南スーダン人の大規模なキリスト教への「改宗」は内戦の敵対感情や近代化の影響をその理由とされてきたが、一概にそうとは言い切れないことを示し、そして避難先の状況によって異なるキリスト教観が生じ、さらに帰還によってそれぞれのキリスト教観が変容していくという、「避難の経験」と人々の宗教観との関係のありようを解明するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査日程の変更はあったものの、南スーダン、ウガンダにおけるククの人々の生活と宗教との関わりについて見ていくという従来の目的は達成しつつあるため。また調査地域ごとにデータを蓄積しているため、今後これまで得られたデータを整理し、考察を加える必要があるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年4月から南スーダンに戻り、まずカジョケジにおいて調査を行う。カジョケジ郡の一家庭に滞在し、人々の実際の生活と宗教との関わり方の変遷について参与観察とインタビューによって明らかにする。特に聖公会以外の制度的宗教、及び在来宗教とキリスト教とがカジョケジにおいてどのように関わるのかについて調査を行う予定である。またアジュマニ在住経験者が多く帰還しているため、彼らにアジュマニにおける生活と宗教に関するインタビューを行う。 そして6月からジュバにおいて帰還から一定期間を経た帰還民たちの生活、宗教実践の状況を見ていくと共に、内戦中のジュバにおけるクク人の宗教のあり方についてのインタビューを教会関係者、及びジュバ在住のクク人に対して行う。8月に帰国、調査結果の整理と発表を12月まで行い、そこで得られたコメントを生かして2013年1月より博士論文執筆を開始する予定である。なお、2012年4月にスーダン共和国在住南スーダン共和国出身者のスーダン共和国市民権失効されるという状況に伴い、従来計画に入れていなかったハルツームでの調査を行うこととし、2012年2月に遂行した関係で、ウガンダでの調査日程を2012年5月から3月に変更している。
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Research Products
(4 results)