2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙進化に対する小スケール揺らぎの影響とその観測的検証
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11J03430
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齊藤 遼 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | インフレーション / 原始密度揺らぎ / 微細構造 / 非ガウス性 |
Research Abstract |
今年度の研究では前年度に引き続き、原始密度揺らぎのスペクトルの微細構造に関する研究を中心に行った。 現在観測されている宇宙の構造は全てインフレーション期につくられた原始密度揺らぎを起源としていると考えられている。原始密度揺らぎのスペクトルにはインフレーションを引き起こす物理機構に関する情報が含まれており、種々の観測を通してインフレーションに関する精密な情報が得られるようになってきている。本研究では非常に大きな質量を持つスカラー場が原始密度揺らぎのスペクトルに与える影響を調べ、スペクトルに現れる微細構造を解析する事でインフレーション模型の背景にある高エネルギーの物理の情報を得ることのできる可能性について調べた。前年度から今年度の前半にかけては、まずパワースペクトルへの影響を調べ、重いスカラー場とインフレーションを引き起こしているインフラトン場とが微分結合をしている場合には、共鳴現象によってパワースペクトルに特徴的なピークが現れることを見出した。今年度の後半には、さらに解析を進め、同様の共鳴現象によって非ガウス性に現れる微細構造に関する研究を行った。現れる微細構造を様々な結合の場合に調べ、非ガウス性への影響はパワースペクトルへのものに比べて特に顕著であることを見出した。また、パワースペクトルと非ガウス性に生じる微細構造の相関についても調べた。この相関を用いる事で微細構造の検出の有意性がどの程度高くなるかに関しては、これからの研究の課題である。 また、上記の課題とは独立に、mssive gravityに関する理論的・観測的な研究、及びガンマ線バーストのレンズ効果を用いた宇宙ひもの制限に関する研究も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究によって、研究課題のひとつであった密度揺らぎの微細構造に関する研究を終えた。残る一年でもうひとつの課題である原始ブラックホールによるWIMPの降着の研究を終えることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度には原始ブラックホールによるWIMPの降着の研究を中心に行っていく。一部のパラメータ領域で未だ結果が信頼できない部分があるため、計算コードを再検討し、まずは降着量の評価を確定させる。また、原始ブラックホールへの新たな制限もいくつか得られており、その結果により問題となっているパラメータ領域のある部分は除外できることが期待される。 また、密度揺らぎのスペクトルの微細構造についてもさらに研究を進め、その検出可能性についても調べていく予定である。
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Research Products
(8 results)