Research Abstract |
歩行機械はアクチュエータを能動的に作動させることで状況に応じたアシストカを発生させれば環境適応性は高まるが,一方で,脚関節にかかる自重トルクを負担するためにエネルギ消費が高く連続運転時間に制限がかかる問題や,装置の価格面での課題が発生する.そこで,本研究では,上体重心の高さ変化にともなう位置エネルギ消費を回生して,自重トルクを軽減するアシストカとして利用する方法で,歩行機械の実現を狙っている.研究は大きくわけて3個の課題と,それらの統合で大別される.1つ目は,(A)脚関節補償原理・機構の自動化,2つ目は,(B)傾斜面での脚関節補償原理の考案,3つ目は,(C)動歩行時のエネルギーロスの回生である. 24年度は,以下の内容を実施した. (A)については,圧力センサ4つのみで,歩行速度2m/s~6m/sまでアシストカを歩行に連動可能なシステムを完成させた.安価な電子部品のみでアシストカの制御を可能とし,装置全体の低価格化や軽量化に貢献が期待できる. (B)については,23年度に示した,ばね取付け角度とばね定数の2つのパラメータ調整で安定な平衡状態をリンク機構に構築する方法について,パラメータチューニング法を検討した.これにより,傾斜地でも自重補償効果低下を抑制可能な自重補償機構を設計可能とした. (C)については,(A)のシステムを実装した実験機を製作し,トレッドミル上でのアシストカの計測,複数人の被験者での官能検査,および屋外,階段などでの実証試験を行った.約1.5kgの実験機を利用して,実際に歩行時の上体重心の高さ変化から位置エネルギを圧縮空気として回生して,アシストカを連続的に発生可能なことを確認した.電源を必要としない歩行補助であり,様々な場面での応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度研究において,装置自重による慣性抵抗が歩行アシスト時の妨げとなることを課題としてあげた.そこで24年度では(C)の歩行時の上体重心の高さ変化にともなう位置エネルギ消費を回生するシステムを中心に,慣性抵抗を抑えつつ,アシスト力を増強する機構設計を検討した.具体的には,アシスト装置中で最も重い空気ばねを股関節(回転中心)に近づけて,歩行時の慣性抵抗を低減する工夫により,片足約3kgfのアシスト力を発揮しつつ,装置装着時の慣性抵抗の増加を抑制した.25年度は,24年度に製作した実験機をもとに,さらに低慣性かつ高アシスト力となるパラメータの探索と,階段や傾斜地でのアシスト力の調整にについて検討を行う.
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