2011 Fiscal Year Annual Research Report
ロバストネスの遺伝基盤と種内変異に関する研究―拡張した頭部予定領域の修復を例に―
Project/Area Number |
11J03510
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
田中 健太郎 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | キイロショウジョウバエ / 頑健性 / 細胞死 / 種内変異 |
Research Abstract |
温度変化などの環境的攪乱、遺伝的変異による内因的攪乱の存在下においても、生物は比較的均一な表現型を示すことができる。その一例として、キイロショウジョウバエの胚発生において、bicoid遺伝子のコピー数増加により拡張した頭部予定領域を修復する機構が知られている。本研究の目的はこの修復機構について以下の2点を明らかにし、個体発生に頑健性をもたらす機構の生物学的特性に新たな知見をもたらすことにある。 1)修復機構に働く遺伝子cg15479の機能、発現の解明 ・in situハイブリダイゼーション法をおこない野生型胚と頭部領域が拡張した胚について、cg15479遺伝子発現部位を調べた。結果、胚の頭部領域で発現が確認され、また、頭部領域が拡張した胚ではより強いシグナルが確認された。 ・組換え体を作成し、本遺伝子を強制発現させたところ、翅・眼の両方において器官のサイズが小さくなり、その原因は細胞死が過剰に誘導されていることであると分かった。 これらのことから、本遺伝子は胚発生期において細胞死を誘導し、頭部予定領域の拡張を修復する働きを有すると考えている。 2)野外集団にみられる修復能力の変異に対応する遺伝的実体の解明 ヘテロ個体とホモ個体の相対生存率を指標としたスクリーニングの結果、修復に関わる遺伝子に変異を持つと思われる4系統について絶対的な尺度として艀化率を指標とした実験をおこなった。4系統中1系統は母性効果を示す遺伝子の変異による影響であったが、残りの3系統はスクリーニングの結果同様、修復に関わる遺伝子に変異を持つことが大いに期待できる。これら3系統について、cg15479遺伝子との相補性を調べたところ、相補性を示したことから野外由来系統の遺伝的変異は未知の修復に関連する遺伝子上に存在することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
cg15479遺伝子の機能解析について、当初の計画より早く、その発現部位、過剰発現による効果を明らかにできたことは大いに評価できる。しかし、野外系統の変異の同定に関しては、当初の計画のマッピング集団の設立に向けて遅れが生じているため、双方の成果を考慮したうえで(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
cg15479遺伝子の機能解析については実験結果をまとめ、論文投稿を進める。野外変異に関してはマッピング集団の設立を進め、候補領域の絞り込みをおこなう。
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