2012 Fiscal Year Annual Research Report
二核活性型金属触媒の創出に基づく適用範囲の広い不斉バイヤー・ビリガー反応の開拓
Project/Area Number |
11J03551
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小熊 卓也 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄サラン錯体 / 酸素酸化 / 2-ナフトール / 酸化的脱芳香族化 / 炭素-炭素結合形成 / 酸化的不斉カップリング / 鉄触媒 / ニトロアルカン |
Research Abstract |
昨年度報告した、鉄サラン触媒を用いた第2級ラセミ体アルコール類の酸化的速度論的分割(J.Am.Chem.Soc.2011,133,12937.)および、2-ナフトール類の酸化的カップリング反応の機構的考察(Chem・Commun.2012,5823.)で得られた知見を基盤に、同触媒を用いたバイヤー・ビリガー反応を含めた種々の不斉酸化反応を検討した。その結果、鉄サラン錯体が1,3-二置換-2-ナフトール類の酸化的不斉脱芳香族化の触媒となることを見いだした。種々の2-ナフトール誘導体がニトロメタン存在下、空気中の酸素を酸化剤に用いて、第4級不斉炭素中心を有する光学活性なエノン類へと変換される。また、ニトロエタンおよび1-ニトロプロパンを求核剤に用いると、2連続不斉中心を有する光学活性なニトロエノン類が高エナンチオおよび高ジアステレオ選択的に得られる事も見いだした。さらに、得られたニトロエノン類はルーシュ還元及び、続く亜鉛還元によって対応する光学活性なアミノアルコールに、また過マンガン酸カリウムで処理する事によってヒドロキシジケトンへと、いずれもジアステレオ選択的に変換可能である事も示した。これまでにもヒドロキシ芳香族化合物の酸化的不斉脱芳香族化反応は幾つかの報告がなされているが、炭素-ヘテロ原子結合形成反応に伴う例が主である。他方、炭素-炭素結合形成に伴う酸化的不斉脱芳香族化反応は第4級不斉炭素中心を含む光学活性なエノン類の直裁的な合成方法となるものの、これまで当量の銅塩を酸化剤として用いたジアステレオ選択的な分子内反応の報告が一例あるのみであった(Angew.Chem.Int.Ed.2011,50,5834.)。本研究は空気中の酸素を酸化剤として用いる点、分子間炭素-炭素結合形成を伴う点、鉄を含む錯体が酸化的脱芳香族化反応の触媒となる点のいずれにおいても新規性が高い(J.Am.Chem.Soc.2012,134, 20017.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイヤー・ビリガー反応の開発の過程で鉄触媒が空気中の分子状酸素を活性化する事を見いだした。これをもとにアルコール類の不斉酸化反応及び2-ナフトール類の不斉脱芳香族化反応を見いだした。これらはいずれも鉄錯体の触媒としての広い可能性を示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに鉄触媒を用いた(1)アルコール類の空気酸化、および(2)フェノール類の脱芳香族化反応を見いだした。これら知見を基盤に、より高度に制御された不斉酸化反応の開発を行う。具体的には、鉄触媒を用いたナフトール類の水素原子引き抜き反応および脱芳香族化反応を組み合わせたタンデム型反応である。また、引き続きバイヤー・ビリガー反応も同時に検討する。
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