2011 Fiscal Year Annual Research Report
三重鎖形成を基盤とした革新的ゲノムDNA分析技術の開発
Project/Area Number |
11J03703
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 浩介 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 人工核酸 / オリゴヌクレオチド / DNA分析 / BNA / 三重鎖核酸 / ホスホロアミダート / ホスホロチオアート |
Research Abstract |
ゲノム研究の進展により、ゲノムDNA上に存在する一塩基の違いである一塩基多型(SNP)が原因となって医薬品に対する感受性の個人差が生じていることが明らかとなってきた。また、がんの原因として損傷塩基の関与が指摘されることなどから、DNA分析法はこれからの医療において重要な役割を果たすと考えられる。このような背景のもと、これまでに有用な新規DNA分析法を開発してきた。しかし、この新規DNA分析法は、細胞内適用性と対応可能な配列に関して課題を残している。そこで、本研究においては、三重鎖形成を基盤とする当該DNA分析法を種々の配列に対応可能で、ユニバーサルな分析法とするとともに、細胞内環境で使用できる分析ツールとしてより汎用性の高い分析法へと発展させることを目的とし、研究を開始した。 平成23年度は、細胞内適用性の観点から中性条件で切断可能なP-S結合を有するオリゴヌクレオチドの合成を行なうため、対応する新規人工核酸の合成を行なった。さらに、この新規人工核酸を導入したオリゴヌクレオチドが、銀イオンやヨウ素の存在下で期待した通り中性条件下で切断できることを確認した。また、三重鎖形成における標的配列の制限の克服を志向した研究に着手し、従来三重鎖形成により検出が困難であるとされたプリン鎖にシトシンを含む配列を用いてSNPを検出できることを明らかとした。この成果は、三重鎖を基盤とした技術に共通する課題の克服という観点からも重要であると考えられ、プローブを蛍光標識化し、SNPの視覚的検出につなげるべく検討を継続している。 一本鎖DNAやRNAの検出にも展開すべく二重鎖形成を引き金としたオリゴヌクレオチドの切断についても基礎的な検討を行い、その成果を論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度計画していた、P-S結合を導入したオリゴヌクレオチドの合成に成功し、切断反応が進行することを確認できた。また、三重鎖の標的配列を拡張する試みについても、良好な結果を得ていることなどから、おおむね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、23年度の結果を受けてシトシン(C)認識プローブの実践的な応用を行うとともに、P-S結合を有するプローブの発展的な検討を行う。即ち、Cを含む配列であり尚かつ生体機能へ影響を及ぼすSNPを分析対象としてC認識プローブを設計・合成し、HPLCにより反応性を評価するとともに、蛍光マイクロプレートリーダーにより蛍光シグナルを定量しCを含む配列中の蛍光SNP分析を達成する。また、P-S結合を有するプローブに関しては、切断部位の周辺に化学修飾を施すことによる反応性への影響について評価する。さらに、レシオ測定を行うことによって細胞系へ適用するための基礎的検討を行う。
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