2012 Fiscal Year Annual Research Report
ゴシック建築の精神性-擬ディオニュシオスを中心とした「光の形而上学」からの影響
Project/Area Number |
11J03786
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
坂田 奈々絵 上智大学, 神学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中世 / 中世思想 / 教父 / 修道院 |
Research Abstract |
引き続きシュジェールの文書についての読解をすすめると同時に、サンドニ修道院付属聖堂の献堂式の執行について、当時の資料を参照しつつ研究を進めた。 またサンドニ修道院における擬ディオニュシオス文書受容の系譜について、史料をもとに調査し、またこれと並行して、現在めシュジェール研究において、彼の用語的な背景として指摘されているラテン語古典について読み進めた。それらをもとに、はたしてそこに新プラトン主義的背景がどれほど読み取れるか、という点についての考察をまとめ、9月に教父研究会にて発表を行った。 8月から9月にかけて、イル=ド=フランス及びピカルディ地方のゴシック建築群についての実地調査を行い、サンドニ修道院付属聖堂からの様式の伝播、あるいは初期ゴシック建築の成立過程に主眼を置いた資料の収集を行った。その後、ウィーンの東方研究所(Pro Oriente)にて研究についての意見交換を行った。 その後、シュジェールの新プラトン主義的背景の可能性を探るべく、特徴的に彼が用いている「アナゴーゲー」という言葉に主眼をおいた研究を行い、その成果を11月の中世哲学会にて発表した。これによって、シュジェールの思想的背景が一概にラテン語古典に由来するとは言い切れない点、また12世紀フランスの思想世界におけるサンドニ修道院図書館の重要性についての指摘を行った。 12月からは、『フィロカリア』の翻訳チームに参加した。それによって、擬ディオニュシオス受容の一例として、また修道院制のビザンチン世界におけるあり方について、西方的なシュジェールのそれと比較・考察する上での大きな示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展している点については、研究の目的に記載したシュジェールと擬ディオニュシオスの比較や、実地での調査、また12世紀サンドニ修道院における宗教儀式の考察などについては概ね手応えを掴むことができたと考えている。ただし、12世紀における擬ディオニュシオス受容の全体像については、いまだ調査の途中であるので、この点をもって「おおむね順調に進展している」という自己評価を選んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した通り、12世紀の思想世界における擬ディオニュシオス受容の全体像については不十分であるため、それに関する研究をより深めて行きたいと考えている。また、「影響関係を探る」という目的から、研究対象が多岐に分散している点が見受けられるので、今後は擬ディオニュシオスから12世紀に軸足をしっかりと置き、その次代の思想世界における擬ディオニュシオス受容の問題を明確化することに主眼を据え、史学的背景としてのゴシック建築の設計論の見直しと、クリュニー修道院からシュジェールへの影響について明確化していくことを目標としつつ、研究を進めて行きたいと考えている。
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Research Products
(3 results)