2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト核内受容体すべてをスクリーニング可能な万能蛍光トレーサーの開発
Project/Area Number |
11J03966
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
巣山 慶太郎 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 核内受容体 / 受容体結合試験 / 蛍光トレーサー / ビスフェノール |
Research Abstract |
核内受容体は細胞核に存在し、リガンドが結合することで活性化されて遺伝子の転写を調節するタンパク質である。核内受容体は現在、創薬の重要なターゲットであり、核内受容体に対する種々の化合物の結合親和性の網羅的な調査は緊急に解決されるべき課題である。核内受容体と化合物の結合親和性を調べる方法としては放射標識トレーサーを用いる結合試験が汎用されているが、放射標識トレーサーの取り扱いに特殊な施設・設備を必要することや高額であることなどが問題となっている。こうした中、当研究室では内分泌撹乱物質・ビスフェノールAの類縁体であるビスフェノールCが複数の核内受容体に結合することを明らかにした。そこで、この化学物質を蛍光標識すれば多くの核内受容体の結合試験に適用可能な万能の標準物質・トレーサーとして使えると考え、その合成と試験系の確立のための研究に着手した。 本年度はビスフェノールCを結合核とする蛍光トレーサー候補化合物の合成と核内受容体ERに対する結合親和性の評価を行った。ビスフェノールCの片方のヒドロキシル基に様々な長さのアミノアルキル基を導入し、末端のアミノ基を蛍光標識することで、長さの異なるリンカーを有する7種類のリガンドの合成に成功した。合成した蛍光トレーサー候補化合物の核内受容体ERαおよびERβに対する結合親和性を測定したところ、ほとんどのリガンドがIC_<50>値10nM以下の非常に強い結合親和性を示した。現在、これらのリガンドをトレーサーとする蛍光による結合試験系の確立を行っている。 一方、他のトレーサー候補の探索の結果、核内受容体RXR、LXRのサブタイプ計5種類に強く結合するビスフェノールA類縁体を新たに発見した。そこで、その化合物をもとにした蛍光リガンドの合成も行った。合成したリガンドは核内受容体RXRに強く結合することが判明し、新たな蛍光トレーサーとなりうることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の前に合成していた蛍光りガンドを基盤としたトレーサーの改良に成功した。まず、複数の受容体に結合するビスフェノールCを基本骨格とするリガンドの合成法を確立し、トレーサー候補となる7種類のリカンドの合成を達成した。合成リガンドは予測通り核内受容体に非常に強く結合した。以上より、1年度目の目標であったリガンドの合成・核内受容体のERへの結合親和性測定を達成でき、予定通りの進捗状況であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに合成した蛍光トレーサー候補化合物を用いて、核内受容体ERに対する蛍光による結合試験系を構築する。そして、構築した蛍光による試験系を用いて約500種類の化合物に対する結合親和性を測定し、放射標識化合物をトレーサーとした場合の結果と比較し同等の試験系であることを確かめる。さらに、トレーサーと受容体が結合することによる蛍光強度の増加を定量化し、ERαについて活性炭を用いたB/F分離操作の不要な「混ぜるだけ結合試験法」を確立する。その結果が問題なければ、随時他の受容体にも拡張・展開して核内受容体の蛍光による試験系を完成させる。
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