2011 Fiscal Year Annual Research Report
カスミカメムシ2種におけるメスの交尾後行動の変化の検証とその生理学的要因の解明
Project/Area Number |
11J03967
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
山根 隆史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター・病害虫研究領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 交尾受容性の低下 / 交尾抑制成分 / オス誘引性の低下 / 射精物 / 栄養成分 |
Research Abstract |
アカヒゲホソミドリカスミカメのメスは交尾後に交尾受容性の低下が観察され、時間の経過とともに性受容性の回復がみられ、最終的には半数以上のメスが再交尾した。そして、一度交尾を経験して射精物が少ないと推測されるオスと交尾をしたメスは交尾受容性の低下がみられないことから、メスの交尾受容性の低下にはオスの射精物が影響していると考えられる。さらに、オスの内部生殖器の抽出物をメスの腹部に打ち込んだ場合、メスの交尾受容性の低下が観察されることから、オスの内部生殖器にメスの交尾抑制成分の存在が示唆される。さらに、分子量・臓器別で分離した成分の効果から、これらの成分は精巣もしくは付属腺に存在する低分子で即効性の作用を有するものと付属腺に存在する高分子で遅効性の作用を有するものであると推測される。次に、オス誘引性の低下についてY字オルファクトメータを用いて検証したところ、本種のメスのオス誘引性の低下は交尾から1日後から観察され、4日後に消失することが明らかになった。また、一度交尾を経験して射精物が少ないと推測されるオスと交尾をしたメスは未交尾メスとオスの誘引性が変わらず、交尾メス(未交尾のオスと交尾をしたメス)よりも誘引性が低かった。以上のことから本種のメスの交尾後のオス誘引性の低下は交尾の際にオスから輸送される射精物、またはその中に含まれる成分に起因すると推測される。また、エサと水を与えなかった場合に交尾をしたメスは未交尾メスに比べて、生存時間が長くなった。一方、エサと水を与えた場合には交尾をしたメスと未交尾メスで違いは見られなかった。この結果からメスは交尾の際にオスの射精物から栄養成分や水分を受け取っていると思われる。以上の結果は本種の繁殖生態を解明する上で重要となるメスの交尾後の行動変化を明らかにしており、行動変化に影響を及ぼす生理的要因を解明する研究を進める上で基礎となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水稲を加害するカスミカメムシ2種のうち、本年度はアカヒゲホソミドリカスミカメについて、まずメスは交尾後の性受容性が低下すること、その要因となるオスの内部生殖器の成分の効果を明らかにしており、また交尾後のメスはオス誘引性も低下していることを示している。初年度で研究環境の構築から開始したが、アカヒゲホソミドリカメの交尾後の行動変化とそれに影響を及ぼしているオスのもつ化学物質の存在を実験的に示している。
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Strategy for Future Research Activity |
アカヒゲホソミドリカスミカメのメスにおいて、交尾がメスの性フェロモンの保持量や放出量に与える影響を検証し、また、動物一般にその行動を作用している生体アミンがメスの交尾後行動に与える影響を検証する。さらに、アカスジカスミカメについてもオス由来成分がメスの交尾受容性に与える影響、そして、生体アミンがメスの交尾後行動に与える影響を検証する。
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