2011 Fiscal Year Annual Research Report
胃がんにおけるmiRNAクラスターの発現制御機構とそのがん化との関連の解析
Project/Area Number |
11J04240
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
橋本 裕 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 胃がん / miRNA / DNAメチル化 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
当初のmiRNAはDNAメチル化との関連性が低かったため別のmiRNAに注目した。本研究では胃がんにおいて異常DNAメチル化により発現が低下している複数のmiRNAが、がん関連遺伝子発現制御を協力的に行っているかどうかを調べる事を目的とした。協力的に機能するmiRNAの候補を選出するために私たちが前回行ったmiRNAマイクロアレイを再解析したところ、脱メチル化剤処理後の胃がん細胞株で50個のmiRNAの発現が発現増加していた。私たちはGEOマイクロアレイデータベースにより胃がんで発現増加していると報告されている遺伝子に注目し、これらの遺伝子を標的とするmiRNAを50個のmiRNAから探索した。解析の結果、dihydropyrimidlnase-like 2(DPYSL2/CRMP2)遺伝子が胃がんで発現増加し、miR-224クラスター(miR-224/452)の導入により標的遺伝子が大きく低下した。またmiR-224クラスターはDNAメチル化により発現低下することがわかった。さらに原発性胃がん組織においてmiR-224のメチル化はDPYSL2の発現増加に寄与し、DPYSL2は胃がんにおいて細胞増殖に関連する癌関連遺伝子である事を示した。一方、私たちはmiR-340/181cがDNAメチル化により発現低下し、これらを共に胃がん細胞株に導入したところ、協力的に複数の癌関連遺伝子の発現調節していることを示した。また胃がん細胞の増殖抑制が起こる事も示した。以上より、エピジェネティックな発現制御を受けているmiRNAは協力的に標的遺伝子を発現調節している可能性が高く、胃がんにおけるこのような複数のmiRNA発現低下は癌関連遺伝子の発現増加に大きく影響する事が推測される。このようなmiRNAの発現調節機構の研究は胃がんの発症機構解明並びに、新規治療薬の開発にも役立つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回の目的であった、クラスターを含めた複数のmiRNAが相乗的に作用している標的遺伝子を同定できた。またこれらのmiRNAの中には実際にクラスターを形成していなくても、エピジェネティックな発現制御を受けるmiRNA集団として標的遺伝子の発現調節に関わっている事を示す事ができた。このような概念はこれまでに報告されておらず、脱メチル化剤の作用機序解明並びに副作用の予測やsiRNA創薬の発展に非常に重要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、約一年間であるが、スペイン・Bellvitgeバイオメディカル研究所・Dr.Estellerのチームのもとでの共同研究を予定している。著名なエピジェネティクス研究者であるDr.Estellerと連携し、別の消化器系がんにおいてエピジェネティックな発現制御を受けている複数のmiRNAとその標的遺伝子との関連や最近報告されたmiRNAの囮として機能していると言われるcompetitive endogenous RNA(ceRNA)との関連についてさらなる解析を行いたいと考えている。
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Research Products
(7 results)