2011 Fiscal Year Annual Research Report
グラフ上の逆問題に対する境界制御法を用いた解析手法について
Project/Area Number |
11J04248
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
和田 尚樹 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 偏微分方程式 / 逆問題 |
Research Abstract |
交付申請書の年次計画欄にも書いたとおり,観測データと考えるD-N写像とグラフの位相構造との関連についての研究を行った.申請書には位相構造決定の一意性についての研究を行うと書いたが従来の方法では考察が非常に複雑となってしまったために,C*環の表現定理との関連に基づいた手法の確立を目標に研究を進めた.本研究手法は他に例のない新しい手法であり,逆問題研究という点からだけでなく,数理物理の背景をもつ問題と抽象的な純粋数学理論の関連について示唆を与えるという点からも非常に興味深いものであると考えている. 境界制御法では,波動方程式の解からなる空間への射影作用素の族の構造の解析が逆問題解析の中で重要な役割を果たすことで,内部の波動伝播媒体の位相構造や方程式の未知係数等の決定が行われる.また,表現論においても代数構造からスペクトルと呼ばれる位相空間を決定することが重要な役割を果たしている。 この類似性に着目して,射影作用素の族から決定される,あるC*環のスペクトルの位相構造とグラフの構造が関連するとの考えのもとで研究を行った.幾つかのグラフについて観測時間を変えながら,このC*環を具体的に調べあげ,調べあげた例では,スペクトルの位相構造において特異性をもつ点の個数とグラフに含まれる頂点の個数とが一致することを発見した.境界制御法を用いた従来の方法ではグラフがサイクルを持つ場合の解析は困難だったが,上述の結果はグラフがサイクルを持つ場合に対しても適応が期待される新たな知見であると考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の方法を用いた逆問題の解の一意性についての研究は考察が複雑化したため,交付申請書に記載した通りには進展しなかったが,C*環の表現論との関連に注目した解析法の研究については当初計画以上に進展した.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に書いたように,現在はC*環のスペクトルとグラフの位相構造の関連について,具体例で得られた結果を一般の場合に証明することを第一の目標として研究を続けていきたいと考えている.また,平成22年度にはグラフが木構造をもつ場合に,境界観測データからグラフの構造,および未知係数の数値的再構成法に関する結果を得ているが,その再構成法の数値的実現についても今年度は研究を行いたいと考えている.
|