2011 Fiscal Year Annual Research Report
情動的注意におけるトップダウン・ボトムアップ処理モデルの構築
Project/Area Number |
11J04267
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原口 恵 九州大学, 人間環境学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 注意 / 情動 / 感情馴化 / 情動誘発盲 / 変化検出 |
Research Abstract |
本研究は,情動刺激の処理と注意機能の関連を明らかにすることを目的とする。まず,情動刺激によるボトムアップ的な操作がその後の情動的注意に及ぼす影響について検討した研究に関しては,情動的な刺激に注意を向けた直後に標的を見落とす現象(情動誘発盲)が,感情馴化によって消失したという結果が報告者の昨年度の実験から得られている。この成果に関しては現在,国際誌に投稿中であり,査読審査を受けて修正中である。 また本年度は,典型性から逸脱している刺激のもつ不快さや奇異性に対する評価が観察者の認知にどのように影響するかを検討した。本研究では,我々が外界の変化を認識する際に,どのような情動の側面がその気づきやすさに関与するかという点に着目した。視覚短期記憶における画像表象の保持過程において,典型性の破壊による印象の変化が関与しているかどうかを検討したものである。実験では,典型性が破壊される条件と破壊されない条件とでの外界の変化への気づきやすさの違いについて,変化検出課題を使用した。具体的には,一部が異なっている一対の画像を交互に提示し,実験参加者に変化に気づいたらすばやくキー押しするよう求めた。実験条件として,変化後の画像が典型性を破壊する条件と破壊しない条件とがあり,これらの変化への反応までの観察回数を指標とした。さらに,変化後の画像に対して不快性尺度と奇異性尺度からなる違和感評定を実験参加者に求めた。結果として,典型性破壊条件ではそうでない条件と比較して画像の変化に素早く気づいた。これらの結果は典型性の破壊に基づく違和感が変化の気づきやすさに関与することを示唆する。これらの成果をもとに,国内発表を1回,国際発表を1回行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は違和感を生じさせる画像に対する情動的注意の機能を検討した。これは,どのような情動の特性を持つ刺激が認知のしやすさを促進するか調べることで,刺激の情動性を無意識的に評価する段階をより詳細に検討できると考えられたためである。また,空間的注意において情動刺激が及ぼす影響については現在遂行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては,まず情動刺激に対する空間的注意の側面についての検討については,その成果を学会発表や雑誌論文として報告する。次にトップダウン的な情動制御と注意機能との関連について,研究計画に記載したものを遂行する予定である。実験参加者を緊張状態に置く可能性が考えられるが,もし苦痛を伴う状態が多ければ,できるだけ負担の少ない課題に変更する。
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