2011 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類大脳新皮質に見出した新規局所軸索投射パターンの領野間多様性とその機能的意義
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11J04272
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀬原 慧祐 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 体性感覚野 / 2/3層神経細胞 / 軸索投射 |
Research Abstract |
大脳皮質内に存在する神経回路構築の共通性および多様性の解明は、大脳皮質を機能的に理解する上で重要な研究課題である。従来の研究により、細胞構築などの多様性は明らかにされてきたが、皮質内局所回路における軸索構築の多様性という問題は、未だに解析が遅れている。本研究課題では、マウス一次体性感覚野(S1)に存在する皮質2/3層興奮性細胞由来軸索の持つ特徴的な局所軸索構築「バレルネット」に焦点を絞り、大脳皮質局所回路がもつ共通性および多様性の解析と、その機能的意義についての解析を行なっている。 当該年度では、マウス大脳皮質において皮質2/3層興奮性細胞の「ネット」様軸索構築が、局所軸索投射に特異的か検討した。子宮内電気穿孔法を用いてマウスあるいはラットS1の2/3層神経細胞にGFPを導入し、GFP標識された細胞体とは対側のS1を観察したところ、GFP陽性の交連性軸索もまた対側S1の4層においてVGLUT2陽性の視床皮質軸索と相補的な分布を示すことを見出した。この結果は、対側由来の交連性軸索も、同側由来の局所軸索(バレルネット)と同様な「ネット」構造を示すことを示唆したため、対側由来軸索のパターンを「対側バレルネット」と名付けた。また、シナプスマーカータンパクを用いた解析から、バレルネットと同様に、対側バレルネットにもシナプスが存在することを示唆するデータを得た。 以上の結果は、「ネット」様軸索構築が、げっ歯類バレル野において2/3層由来の皮質内局所軸索および交連性軸索に共通した回路パターンである可能性を示唆しており、大脳皮質内神経回路パターンの共通性および多様性の理解に寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
皮質内局所投射および交連性投射という、異なる種類の皮質内軸索投射が、互いによく似た軸索構築を持つことを実証しており、皮質内神経回路が持つ基盤的構築の理解に寄与していると考えられ、研究は順調に推移しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、同側及び対側バレルネットの発達過程に着目し、両者の共通点および相違点の解析を行う。すでに予備的な結果として、生後1週目の軸索構築について、細胞体に対して同側のバレル野と対側のバレル野において、軸索構築の顕著な違いを見出しており、現在その違いが生まれる機構を探索している。生後1週目から2週目にかけてのバレル野では、4層バレルの成熟、放射グリアの段階的な減少/分化など、組織構築に種々の大きな変化が起こることが知られている。今後は、これらのうちのどのような要素(あるいはその変化)が、同側および対側バレルネットの発達過程の違いに対応しているか、免疫組織染色を用いた方法等で検討する予定である。仮に、特定の要素との対応関係が明らかになった場合、子宮内電気穿孔法や新生仔への電気穿孔法を用いた遺伝学的操作を通じて、より具体的な機構の解明につなげたいと考えている。研究代表者は、すでに上記の技術について導入に成功している。
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