2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J04305
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山尾 僚 鹿児島大学, 農学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 植物-動物相互作用 / アリ類 / 生物群集 / 化学的防御 / 物理的防御 / 生物的防御 / 防御戦略 / 多形質 |
Research Abstract |
植物は植食者に対して、刺などによる物理的防御や化学物質による化学的防御を発達させる一方、植食者の天敵を誘引し、植食者を排除させる生物的防御を採用するといった多様な防御戦略を進化させてきた。本研究では、物理的防御形質であるトリコーム、化学的防御形質である腺点および生物的防御形質である花外蜜腺と食物体を備えるアカメガシワを材料とし、植物が複数の防御形質をどのように使い分けて利用しているのかを野外調査及び実験によって調べ,植物の複合的な防御戦略を解析した。 各防御形質の発達による成長量への影響を解析したところ、トリコーム密度と腺点密度の増加は成長量を減少させたが、花外蜜腺数と食物体数の発達は成長量に影響を及ぼさなかった。このことから、トリコームと腺点の生産コストは、花外蜜腺と食物体の生産コストよりも高いことが示された。さらに葉齢に応じた各防御形質の分布とその効果を野外調査と実験により検証したところ、トリコームと腺点を若葉で発達させていた。また花外蜜の分泌量、食物体数およびそれらに誘引されたアリ数は成熟葉で多かった。このようにアカメガシワは、葉齢に応じて自分自身による直接防御からアリを使う間接防衛へ防御方法をシフトさせることが分かった。つまり、若く価値の高い葉では高価な直接防御形質で防御し、価値の低下した古い葉では安価な間接防御形質で防御することで、高い成長率を得でいることが明らかとなった。一方、アリの活動性が低い地域では、成熟葉において蜜分泌量が少なく、トリコームや腺点が発達しており、成長速度が遅かった。 これらの結果は、植物がなぜ複数の防御形質を備えるのか?といった近年の植物生態学における課題の一つに、「守る部位の価値に応じて使い分けるため」であるという新たな仮説を提示する重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、アカメガシワ属の防御戦略を解明することを目的としている。現在までの研究は、積極的に野外調査を行うことで、当初の計画よりも重厚な野外データを積み上げることができた。このように、当初の計画通り、アカメガシワにおける防御戦略の解明が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は母性効果などを排除した条件下においても防御形質に違いが見られる事を確認する。また、当初の計画通り、アカメガシワ属のクスノハガシワ、ウラジロアカメガシワについても防御戦略と訪れているアリ類や植食者相を解明し、種間比較を行う。また、論文執筆も同時に行う。
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Research Products
(3 results)