2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J04305
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
山尾 僚 佐賀大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 動物-植物相互作用 / アリ類 / 生物群集 / 化学的防御 / 物理的防御 / 生物的防御 / 防御戦略 / 多形質 |
Research Abstract |
植物は植食者に対して、毛などによる物理的防御や化学物質を含有することによる化学的防御、植食者の天敵を誘引し、植食者を排除させる生物的防御といった多様な防御戦略を進化させてきた。さらに、被食に対する耐性もまた防御戦略の一つとして知られている。本研究では物理的防御形質であるトリコーム、化学的防御形質である腺点および生物的防御形質である花外蜜腺と食物体を備えるアカメガシワ属を材料とし、複数の防御形質を用いた植物の防御戦略を解析する事を目的としている。 本年度は、以下の3点を明らかにすることができた。 1)前年度に、岡山、沖縄、石垣島のアカメガシワ個体群はそれぞれ異なる防御形質を発達させていることを明らかにした。本年度は新たに奄美大島のアカメガシワ個体群がアリによる生物的防御を発達させていることを解明した。 2)岡山、奄美大島、沖縄、石垣島のアカメガシワ実生を用いて被食に対する耐性能力を評価した。その結果耐性能力の大きさは、沖縄株奄美株・石垣株、岡山株の順に高かった。 3)被食処理後の光合成速度の時間的変化を調べたところ、'岡山株では光合成能力に大きな変化は確認できなかったが、奄美大島、沖縄、石垣島由来の株では被食処理後に光合成能力が増大した。また、光合成能力の増大の程度は耐性能力と相関していることが判明した。 これまでの結果から、アカメガシワの耐性能力は被食後の光合成能力の増大によりもたらされていると考えられた。岡山個体群では主としてアリによる生物的防御を、奄美個体群では生物的防御と耐性、沖縄個体群では物理、化学的防御と耐性、石垣個体群では化学的防御と耐性を発達させていることを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、当初の目的通り、植物が生物的環境および非生物的環境に応じた複数の防御形質の組み合わせを変えることで適応的な防御を行なっていることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は植食者に対する誘導防御特性やアリと植食者群集、植食者群集との関係について詳細に解析し、なぜ植物が複数の防御形質を同時に備える適応的意義を明らかにする。また、地域個体群や種毎にアリや植食者のみならず、競争者である他の植物種との関係も考慮し、なぜコストのかかる防御形質を複数備えることが可能なのかについての検証する必要がある。さらに、地域個体群や種間で発現遺伝子の解析や系統解析を合わせて行ない、異なる組み合わせの防御戦略の進化推移も解明にすることで、植物の複合的な防御戦略の進化を解明する。
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Research Products
(9 results)