2011 Fiscal Year Annual Research Report
ワイドギャップ半導体のナノ構造制御と光エネルギー変換デバイスへの応用
Project/Area Number |
11J04433
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
上野 慎太郎 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 色素増感太陽電池 / 酸化亜鉛 / プラスチック太陽電池 / 蛍光体 / 低温合成 / 形態制御 |
Research Abstract |
1.色素増感太陽電池に関する研究 色素増感太陽電池を構成する部材の中で,透明導電性ガラス基板は高いコストを占めており,これをプラスチック基板で置き換えることを試みた.化学浴析出法を用いて,低温で基板上に作製した層状水酸化酢酸亜鉛(LHZA)膜を前駆体として用い,(1)溶解・析出法,(2)熱分解法という異なるプロセスによって,それぞれ90℃以下でZnOナノ構造膜を基板上に得ることに成功した.なお,(1)溶解・析出法はLHZA膜を種種の液相に浸漬し,60~90℃で保持する方法で,(2)熱分解法は,LHZA膜を乾燥機中にて90℃で保持する方法である.熱分解法を用いてプラスチック基板(ITO-PEN)上に作製した電極は,最高変換効率3.4%を記録した.また色素増感ZnO電極のコーティングに関しては,適したコーティング材料の探索及びコーティング層の電池性能に対する効果について詳しく調査した.その結果,これまでに研究をおこなったSiO_2,Nb_2O_5に加え,TiO_2及びZrO_2に関しても再結合抑制効果による電圧の改善が見られ,さらにコーティングターゲットであるZnOの粒成長抑制効果も認められた. 2.酸化亜鉛の蛍光特性とナノ構造に関する研究 ZnOは蛍光体への応用もなされており,UVで励起することによって,紫外~可視領域において様々な発光を示す.本研究において,亜鉛塩の水溶液にアンモニア水溶液を混合し,60℃で保持することによって得られたZnO粒子は,波長560~580nmを中心とするブロードな黄色の発光スペクトルを示す.このときZnO粒子はマイクロサイズで星型の形態を持っており,それぞれの粒子はナノサイズの組織からなることが分かった.前駆体に用いる塩の種類によって,合成されたZnO粒子の発光特性,そして光学バンドギャップエネルギーが異なっており,これらの光学特性と粒子サイズに相関関係があることを見出した.これらの粒子サイズと光学特性について詳細に調査することで,ZnO粒子の光学特性のチューニングが可能になるかもしれない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の一つとして掲げている色素増感太陽電池電極のプラスチック化に関して,ある程度形態制御されたZnOナノ構造膜をプラスチック(ITO-PEN)基板上に作製することに成功しているが,今後はZnOの生成プロセスを詳細に解明し,電池特性,耐久性等の改善に努めていく必要がある.また星型ZnO粒子の水溶液合成もおこなっており,ZnO粒子のナノ構造と光学特性(特に発光特性)の間に相関性を見出した.一方で,コーティングによる色素増感太陽電池電極の改質,層状水酸化金属化合物の合成についての研究は検討の余地があり,次年度は新たなプロセスを導入し,これらの研究に取り組んでいく.
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Strategy for Future Research Activity |
色素増感太陽電池用のコーティングZnO電極に関しては,膜のナノ構造によって適切なコーティング条件が異なることが分かっており,高効率の電極を作製するにはコーティング材料自体の電気特性の改善,膜の構造の改善の両方が必要である.具体的には焼成条件を見直し,コーティング層の組成を制御することで電気特性の改善を目指すことから着手する.プラスチック色素増感太陽電池電極の作製については,電池特性,耐久性等の改善に努めていく.溶液中の過飽和度をコントロールすることによる層状水酸化物の形態制御に関しては,モデル材料として亜鉛化合物に研究対象を絞り,温度以外による過飽和度の制御も視野に入れていく予定である.
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Research Products
(5 results)