Research Abstract |
今年度は,前年度に収集した糞便試料からノロウイルスカプシドタンパク質選伝子の一部をRT-PCRにより取得した後,クローニングし,糞便1検体あたり20クローンの塩基配列を解析した。その結果,糞便1検体あたり複数(3~11)のハプロタイプが検出された。すなわち,一般的なクローニングとシーケンシングによって,感染者の体内におけるノロウイルス遺伝子の変異を検出できることがわかった。検出されたハプロタイプにもとづいて,最適な変異モデルおよび進化モデルを検討し,マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて進化系統樹を作成した。 また,糞便および下水試料からノロウイルス陽性試料を効率的にスクリーニングする方法として,ノロウイルス遺伝子群I,II,IV(GI,GII,GVI)のカプシドタンパク質遺伝子の一部を標的としたワンステップリアルタイムRT-PCRを開発した。3つの遺伝子群それぞれに特異的な既存のプライマーおよびプローブを混合したところ,単独遺伝子群検出系と比較して3~7Ct検出感度が低下し,反応条件を変更しても改善されなかったため,本研究ではプライマーとプローブを新たに設計した。その結果,開発した複数遺伝子群検出系は,既存の単独遺伝子群検出系と比較して,GIおよびGIIについては同等の検出感度を達成し,GIVに関しては3Ct検出感度が向上した。開発した方法を収集した16の下水試料に適用したところ,ノロウイルス遺伝子陽性と判定されたすべての試料からは,GI,GII,GIVのいずれかまたは複数が検出された。開発した方法の検出下限は,単独遺伝子群検出系と同等であり,下水を含む環境試料のモニタリングにも適用可能である。環境モニタリングでは遺伝子検出のための試薬代が高額になるため,本研究で開発した方法で試料をスクリーニングした後に,既存の方法で各遺伝子群を定量するのが有効である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画通り,前年度に収集した糞便試料に含まれるノロウイルス遺伝子について,変異および進化モデルを選定し,進化系統樹を作成した。
|