2011 Fiscal Year Annual Research Report
経頭蓋磁気刺激による運動関連領野機能の解明および治療応用に関する研究
Project/Area Number |
11J04447
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
代田 悠一郎 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 経頭蓋磁気刺激(TMS) / 一次運動野 / 補足運動野 / 運動誘発電位(MEP) |
Research Abstract |
1年度目に当たる本年度は、健常人を対象に補足運動野(SMA)に対する単発経頭蓋磁気刺激(TMS)の効果を、一次運動野(M1)に対するTMSにより誘発される筋電図反応である運動誘発電位(MEP)の大きさを指標として主に検討した。一般には同じ強度の刺激に対するMEPの大きさがM1の興奮性を反映すると考えられているため、様々な刺激条件下でのMEPの大きさを比較することにより、当該刺激がM1の興奮性にどのような影響を与えたかを推察することが可能である。M1内には、TMS二発刺激法により明らかとなる様々な抑制性・促通性の神経回路が存在することが知られており、M1単発刺激に対するMEPの大きさのみならずこれらの回路の挙動をも調べることにより、SMAに対する単発TMSがM1に与える影響をより詳細に検討できると考え研究を遂行した。その結果、SMAに対するTMSは主としてM1内の促通性神経回路の働きを増強させることを示唆するような結果が得られた(論文修正中)。一方で、SMA刺激は、M1単発刺激に対するMEPの大きさを変えず、M1内の抑制性神経回路にも影響しなかった。過去の動物実験からは、SMA内の神経細胞に対する電気刺激がM1の神経細胞に対して与える影響のうちで最も短潜時のものは促通性であることが知られており、今回の結果はこのような動物実験の結果をヒトで裏付けるものと考えられた。 更に、2年度目に向けた予備的な検討として、SMAに対する反復TMS(rTMS)が運動課題に対する反応速度に与える影響につき検討した。視覚的キューを元に右か左かを判断するような比較的単純な課題においては、rTMS前後で有意な反応時間の変化を生じないことを示唆する実験結果が得られており、2年度目に向け基礎的な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」のうち、運動誘発電位(MEP)を測定項目として補足運動野(SMA)に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)の効果を検討する部分については、主要なデータを得て論文投稿に至っており、当初の予定通り研究が進んでいると考えられるため。また2年度目の研究に関する予備的な検討を行う予定であったが、これについても進展が見られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
補足運動野(SMA)に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が反応時間課題に与える影響を検討すべく、さらに健常被験者を対象とした研究を継続する。「研究計画」にある機能画像や脳波との関連を検討する前に、1年度目に行った運動誘発電位(MEP)振幅の検討をさらに推し進めて、筋電図波形そのものの解析を行う可能性がある。
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