2011 Fiscal Year Annual Research Report
薬物担体への応用を目指したリン酸八カルシウムの作製と評価
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11J04659
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 奈津子 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リン酸八カルシウム(OCP) / 水酸アパタイト(HA) / 骨 / がん / ドラッグデリバリー / 徐放化 / 顆粒 / 転化 |
Research Abstract |
本研究では、リン酸カルシウムを用いて骨部位へのドラッグデリバリーを行うための薬物担体を作製することを目的とする。抗がん薬による治療効果を高め副作用を極力抑えるためには、抗がん薬をがん病巣局所に効率よく高濃度に集積し、適当な量の抗がん薬を適切な速度で放出(徐放化)させることが有効である。本研究では、抗がん薬の徐放化担体として、生体内で骨や歯の無機主成分である水酸アパタイト(HA)の前駆体とされているリン酸八カルシウム(OCP)に注目した。薬物を吸着させたOCPを体内に入れると、HAへの転化に伴い吸着特性が変化し薬物が放出されると考えられる。このとき、OCPからHAへの転化速度を制御することで、薬物の放出速度を制御できると考えられる。また、OCPからHAへ結晶構造が変わることで薬物を放出できる可能性があるため、高い放出率が期待できる。本研究では、OCPを用いて薬物担体を作製するための材料合成および評価を行い、薬物担体となる材料自体を生体システムの一部に組み込んだ新たなドラッグデリバリーシステムの構築を目指す。 本年度はまず、生体内を模擬した条件下におけるOCPからHAへの転化挙動の評価を行った。生体内にはOCPの転化挙動に影響を与えると考えられる因子が数多く存在するため、OCPを用いて薬物担体を作製する際にはそれらの影響を考慮する必要がある。OCPを溶液に浸漬し、浸漬後の試料について、研究従事機関で有しているX線回折装置、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡により評価を行った。これにより、溶液のpHや組成がOCPからHAへの転化挙動にどのような影響を与えるかを調べた。次にこの結果をふまえ、OCPからHAへの転化挙動および転化速度を考慮しながら、OCPを薬物担体として応用するための成形を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、OCPの転化挙動の調査およびOCPの成形を行うことができた。また、その成果を論文および学会にて発表することができた。以上から本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はOCPと薬物との相互作用を調べるために、OCPに対する薬物の吸着・放出特性、及び吸着された薬物の薬理効果の評価を行う。まず、薬物(抗がん薬のシスプラチンをモデル薬物として想定)の溶液にOCPを浸漬し、吸着特性の評価を行う。次に、体液を模擬した溶液に薬物を担持させたOCPを浸漬し、HAへの転化による薬物の放出特性を評価する。さらに、細胞(骨肉腫細胞のHOSを想定)を、薬物を担持させたOCPの存在下で培養する。HAに転化することで放出された薬物の薬理効果を、細胞数の増減により評価する。OCPに対する薬物の吸着特性、転化後のHAからの薬物の放出特性、放出された薬物の薬理効果を明らかにする。これらの結果を踏まえ、OCPの作製方法および成形方法、薬物の担持方法を検討し、OCPの薬物担体への応用を目指す。
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Research Products
(6 results)