2011 Fiscal Year Annual Research Report
東ドイツの「文化同盟」 : 自発的結社と大衆組織の結合
Project/Area Number |
11J04727
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊豆田 俊輔 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 東ドイツ / DDR / 知識人 / 文化政策 / 文化同盟 / ベッヒャー |
Research Abstract |
本研究は、旧東ドイツを対象とし、「知識人はいかなる形で体制へと組み込まれていたのか」という問題に焦点を当てたものである。知識人と国家権力の関係を明らかにするためには、様々なアプローチが考えられる。しかし、東ドイツが共産主義政党を中心に翼賛諸政党や大衆諸組織によって徹底的に組織化されつくした社会であったことを考慮に入れると、個人と国家機構を媒介していた組織が問題として浮かび上がってくる。すなわち、彼らは自発的結社として組織されえたのか、それとも大衆組織の一端となっていたのか、検証することが必要になってくる。 この問題を具体的に検証するため、本研究は「文化同盟」という組織に着目し議論を進めてゆく。本組織は共産主義で作家のベッヒャーによって1945年に設立された知識人の結社である。しかし冷戦のドイツでの顕在化にともなって、文化同盟に政治的圧力が高まり、さらには多数の市民の余暇団体が編入させられることになった。こうして本組織は東ドイツ最大の知識人の結社としてだけでなく、同時に大衆組織としての側面を併せ持つようになったのである。こうした経緯を踏まえると、文化同盟は、「自発的結社と大衆組織」という観点から東ドイツの知識人の問題を解明するのに格好の対象といえる。 この研究は、国家による動員のための大衆組織と自発的なアソシエーションの競合と協働という観点から、社会主義体制下の知識人を論じるものである。これは、権力と知識人の関係についての理解を深めるものであり、また旧社会主義国において、社会的な秩序がどのように生み出され、維持されていったのかを明らかにするという意義をもつものである。 報告者は昨年度4月から7月にかけてハレ大学第一哲学部で博士論文の作成を進めた(DC2「研究指導の委託」)。この期間、文書館を利用して史料収集を進めるとともに、ドイツでの研究報告を一件、論文を一本投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者は4月~7月、および9~10月にドイツに滞在し、図書館と文書館に通い、博士論文を作成するために必要なおおよその史資料を収集することができた。また、ハレ大学に「研究指導の委託」で研究滞在している期間、歴史学のセミナー、コロキアムに参加することで、先行研究の把握をすることができた。帰国後の12月には、博士論文の中間審査にあたるリサーチ・コロキアムを開催し、審査を通過した。以上のように、史資料の収集・研究動向の把握・中間審査の終了したため、(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は主として三点挙げることができる。第一は、研究の成果をアウトプットしてゆくことである。このため、5月に日本西洋史学会で、7月にハレ大学で開催される日独共同大学院セミナーで、10月に現代史研究会でそれぞれ報告を計画している。第二に補足的な史資料の収集があげられる。現在、9月に20間前後ドイツに滞在し、ベルリン州立図書館と連邦文書館を訪問し、博士論文に必要な史資料を閲覧・収集してゆく。第三点に、これまで集めてきた大量の文献を読み進めてゆくことである。以上の課題に取り組むことで、博士論文の作成を推進してゆくことを企図している。
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[Remarks] 研究テーマについては
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[Remarks] 研究報告については
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