2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J04750
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
梅田 径 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 藤原清輔 / 六条藤家 / 歌学書 / 情報構造 / 院政 / 藤原重家 |
Research Abstract |
藤原清輔歌学書類の編制及び書写論理の研究を進めたが、研究目的である清輔歌学書類の伝本にある多様な割付、情報構造の解明および、六条藤家歌人たちの研究はあまり進まなかったといわざるをえない。 その主な理由は東日本大震災における研究環境の激変と混乱である。訪書の予定を立てていた東北地方への訪書が行えず、研究費の使用をめぐっても十月ごろまで推進することができなかった。研究費の金額にかかる問題もあった。また、学会の運営等も確定するまで時間がかかることが多かった。家庭環境の変化もあり、 今年度の研究は多く失敗に終わったといわざるをえないが、西日本への訪書を行ったことにより歌学書類の研究はある程度の進展をみせた。具体的な成果にまではいたらなかったもの、2012年度にはまとまった成果となるだろう。まず、和歌初学抄の論文執筆を進めており、奥義抄、袋草紙といった清輔歌学書の研究も手堅く進んでいる。従来は作品と作者の同時代的な観点から論じられてきたものが書写者という審級を用意することによって新しい観点から歌学史を作ることができるだろうし、いままで日の目を浴びることのなかった伝本類にも重要性が認められることになるだろう。項目が細分化した大規模な歌学書や辞書にも適応可能な方法論である。より対応をひろげて、院政記歌学書類への適応を考えて、さらに伝本博捜を続ける必要がある。 周辺的な研究の失敗も大きい。清輔の兄弟である重家、顕昭、季経ら。叔父である長実といったやや周辺的な人物の分析に今年度は労力を費やしたが、うまく研究を進めることができなかった。伝本、新出資料の研究などと合わせて研究を進めたい。特に『重家集』についての研究の失敗が大きく、現在の段階では先行研究を超えることは難しいかと思われる。 データベース等の製作も震災の影響でほぼすべて頓挫しているが、可能な限り研究計画を実施していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
東日本大震災の影響がとにかく大きい。また周辺的研究として行っていた清輔の周辺人物の分析に時間を取られたわりに、うまく成果に結び付かなかった。京都奈良天理への訪書の成果は一定のものがあり、来年度には成果にしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
リソースを歌学書類の分析に費やしたい。特に現在のところもっとも成果がでている『和歌初学抄』の分析と『奥義抄』の分析を進めたい。また『袋草紙』については、抄出本についての研究を進めてみたい。 また、訪書の過程で見つけることができた書物についても翻国や影印などで紹介していくことを考えている。 研究計画については基本的な変更はない。しかし、やや縮減した形で実施することになるであろう。
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