2012 Fiscal Year Annual Research Report
アート・コミュニケーションを促進する教育・支援プログラムの開発とその効果の検討
Project/Area Number |
11J04825
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
縣 拓充 千葉大学, 教養学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | アート / 創造性 / 心理学 / 教育 / ミュージアム / ワークショップ |
Research Abstract |
現状において多くの市民は、芸術を含む創造活動に対して、享受や消費、鑑賞といったかたちで関わるのみとなっている。他方で、自ら何かを生み出したり、柔軟に身の回りを組み替えていくアクションを行うことはほとんどない。しかしながら、市民が創造的熟達者の活動に触れ、そこで得た視点を活かしながら、日常の中で何らかの実践を行うようになることは大きな価値があるだろう。本研究は、アートやアーティストの活動に触れることが市民にもたらす教育的効果を実証的に検証すること、そして、それらを通じ、両者が双方向的にinspire、stimulateし合えるコミュニケーションのあり方や、それを支援・促進する方法を探ることを目的としていた。 第2年度目は、大きく分けて、4つの研究成果が得られた。まず、1)一昨年度収集したワークショップに関するデータの分析から、ワークショップの体験がどのように家庭に持ち込まれるのか、その特徴を示した。また、2)小学校・美術館・大学が連携した鑑賞教育プログラムの実践研究から、美術作品の体験が、児童の日常生活にもつながる眼差しへと転移し得ることを示した。さらに、3)市民と関わりながら活動を行っているアーティストへのインタビュー、及び実践研究から、その活動の過程や、アーティストと市民の間の有意義なコミュニケーションのあり方についての示唆を得た。最後に、4)必ずしも創造的な活動を仕事にしているわけではない市民に求められる創造性の内実や、創造活動との関わり方について、理論的な考察を行い、2編の論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は複数の研究を並行して行う予定であったが、いずれも順調に進展した。また、その成果の一部は論文や学会発表としてかたちになっており、その意味でも計画以上の達成度が得られたと評価できるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
フィールドワークの対象としているプロジェクトの評価の方法に関しては、妥当性の側面に関していくらか課題が残ったと言える。プロジェクトの現場は、年度ごとに内容や参加者が大きく異なるため、その都度フィールドワークの方法を柔軟に変えてゆく必要があるが、今年度は、変化のプロセスをより詳細まで捉えるために、個別のインタビューや、参加者の自己報告に頼らないテスト等を積極的に用いていく予定である。
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