2011 Fiscal Year Annual Research Report
NKG2Dリガンドが胎児・母体間免疫寛容に果たす役割の解明
Project/Area Number |
11J04902
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 瑞穂 北海道大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | NK細胞 / NKG2D / NKG2Dリガンド / 胎盤 / 進化 |
Research Abstract |
ウイルス感染や腫瘍に対する初期の生体防御において,NK細胞は正常細胞に発現しているMHCクラス1分子の発現低下や消失(missing-self),あるいは危険信号として発現した自己分子("induced-self")を認識し,感染細胞や腫瘍化細胞を攻撃する.NKG2Dリガンドは,ウイルス感染や腫瘍化などのストレスによって細胞表面に発現が誘導されるMHC class I様分子であり,NK細胞の表面に発現する活性化レセプターであるNKG2Dとの結合を介して,感染細胞や腫瘍化細胞を傷害する. 本研究では,NKG2Dリガンドシステムの遺伝学的バックグラウンドの構築を目的とし,哺乳類におけるNKG2Dリガンドの比較ゲノム解析を行った.NKG2Dリガンドの同定およびシンテニーの比較により,これらリガンド分子群の起源と進化プロセスを明らかにした.そして,有袋類以降の哺乳類がNKG2Dリガンドを保有することから,有袋類以降の哺乳類がNKG2Dリガンドを介した"induced-selfrecognition"を保有することを示した.現在,ヒトのモデル生物であるマウスに注目し,系統間に認められるNKG2Dリガンド遺伝子レパトアの差異と疾患感受性との関係が持つ機能的意義を詳細に解析している. さらには,系統発生学的に胎盤と期を一にして出現したと考えられるNKG2Dリガンドシステムが胎児・母体間免疫寛容にどのように関与するのかを明らかにする.そして,免疫寛容というNKG2Dリガンドの新たな分子機序の解明と免疫寛容システムの異常による不妊や流産の治療法への貢献を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,哺乳類におけるNKG2Dリガンドの進化ダイナミクスについて興味深い知見が得られている.これまでの解析からマウスの系統によってNKG2Dリガンド遺伝子のレパトアが異なるという予備的な知見を得た.これより,NKG2Dリガンドのレパトアが系統間における疾患感受性を規定している可能性が考えられる.また,胎盤におけるNKG2Dリガンドの発現についても知見が得られているため,妊娠時の免疫寛容におけるNKG2Dリガンドの役割について今後の解析が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
1.近交系マウスにおけるNKG2Dリガンドの比較ゲノム解析により,NKG2Dリガンドの多様性と疾患感受性との関係を明らかにする. 2.マウス胎盤におけるNKG2Dリガンドの発現解析を行う. 3.当研究室で同定したNKG2Dリガンドの1つであるH60c(histocompatibilityantigen60c)について,H60cノックアウトマウス,H60c発現制御トランスジェニックマウスを作成し,H60cの発現が妊娠・胎盤の維持に与える影響を明らかにする. 4.マウスでの実験結果を受けて,ヒトの正常胎盤と病的検体におけるNKG2Dリガンドの発現解析を行う.
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