2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J04962
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 淳史 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 電磁界曝露装置 / 誘導電流 / P19細胞 / 神経分化 / 培養神経回路網 / マイクロ電極アレイ / 自発電気活動 |
Research Abstract |
本研究では,時間変動する電磁界の生体刺激作用を培養細胞に適用し,培養環境下での誘導電流分布・熱分布を考慮した細胞刺激システムを開発することで,細胞機能に対する電磁界の作用機序の解明および刺激作用を積極的に利用した機能制御手法の開発を目指している.そこで計画初年度である平成23年度は,(1)浮遊細胞および接着細胞のそれぞれの培養試料を対象とした電磁界曝露装置の開発と(2)各装置を用いた培養細胞への電磁界曝露実験を行い,神経細胞の分化と回路網活動に対する影響を評価した.以下に,得られた成果を示す. (1)インキュベーター体型および計測システム一体型の電磁界曝露装置の開発 分化誘導時の浮遊細胞への均一な電磁界曝露を行うために,インキュベータ内にHelmholtzコイルを設置したインキュベーター体型曝露装置を作製した.また,培養容器底面に生着した培養神経回路網の局所領域を刺激し,その応答をリアルタイムで観測するために,軟磁性材料と外部磁界およびマイクロ電極アレイ基板を組み合わせた局所誘導電流刺激システムを開発した.各装置の誘導電流密度分布・熱分布を数値シミュレーションおよび実測により評価した結果,同実験システムを用いることにより熱作用の影響がない,安定した電磁界曝露環境が実現できることを確認した. (2)電磁界曝露に伴う神経分化・回路網活動の調節 神経分化への影響を確認するために,培養溶液中を浮遊する胚様体に対して4日間の恒常的な低周波磁界曝露を行った.また,培養神経回路網に対して,局所的な誘導電流刺激を行った際の誘発応答を評価した.結果として,10mTの曝露群では,胚様体のサイズ低下と神経分化効率の上昇を介して,分化した神経細胞のスパイク発火頻度が有意に増加することを確認した.また,培養神経回路網の誘発応答については,スパイク発火頻度は誘導電流刺激時の刺激周波数に依存して抑制もしくは増強することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,交付申請書で計画した曝露装置の製作に取り組み,実験条件・使用状況を考慮した2つの電磁界曝露装置の作製を完了した.また,各曝露装置を用いた基礎的な実験を実施し,各実験について目標とする刺激応答を確認することができた.そのため,現在までに本研究の目的となる細胞分化・細胞機能発現の調節と制御に向けた実験の準備の段階が整ったものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
培養神経回路網を対象とした局所誘導電流刺激の手法に関しては当初考えていた空芯コイルによる刺激が困難であることがわかったため,軟磁性材料を用いた新規手法の導入を行った.また,これまでの実験によって軟磁性材料であるMu-metalが短期的な細胞毒性を及ぼさないこと,培養神経回路網を軟磁性材料に対する外部磁界印加によって発生する誘導電流を用いて非接触で神経細胞を電気刺激できることを確認した.しかし,同手法ではMu-metalの近傍で発生する誘導電流を利用するため,誘導電流の強度と分布の詳細な評価を行う必要がある.そのため,次年度は導入した手法の有効性や問題点の評価を行うために,Mu-metal近傍の誘導電流密度分布の推定と,中・長期的な細胞毒性等についても評価を行っていく予定である.
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