2011 Fiscal Year Annual Research Report
病原性大腸菌感染における宿主蛋白質分解機構制御の解明
Project/Area Number |
11J05035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森川 華子 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 細菌感染 / エフェクター / 細胞周期 / NEDD8 / ユビキチン |
Research Abstract |
痢性疾患は現在でも毎年150万人もの乳幼児の命を奪っており、地球規模で解決しなければならない課題の一つである。そのような下痢性疾患を引き起こす病原性細菌のなかでも、本研究は特に腸管病原性大腸菌(EPEC;enteropathogenic E.coli)に焦点をあてている。本研究は、EPECのエフェクター分子Cifによる宿主細胞内のSCF制御機構を明らかにし、EPEC感染における宿主細胞応答を解明することを目的として行っている。そのために以下3項目の研究を実施する計画としている。(1)CifによるSCF制御の分子メカニズムを調べる。(2)EPECのマウス感染モデルを用いて、体内でのEPEC感染におけるSCF複合体制御の生理的な意義を解明する。(3)定量プロテオミクスを用いて、宿主ユビキチン化蛋白質のプロファイルを調べる。これらのことより、Cifによるユビキチン化を介した宿主細胞応答の総合的理解を目指す。 まず、他の研究グループにより、SCFの制御分子として知られているNEDD8(neural precursor cell expressed developmentally down-regulated gene 8)を標的とし、脱アミド化することが示された。本研究ではさらに解析を進め、Cifにより脱アミド化されたNEDD8がSCF複合体を修飾すると、SCF複合体の活性を著しく阻害し、細胞周期制御因子のユビキチン化が抑制されることを見出だした。その結果、Cifにより、EPEC感染細胞において、細胞周期制御因子の分解が抑制され、異常に蓄積することによって、EPEC感染細胞の細胞周期進行が停止することを明らかにした(計画1の実行)。その成果を、国際学会・国内学会にて発表した。さらに、その成果に基づき、動物感染モデルを用い、CifがNEDD8を標的とし、SCF複合体の活性を抑制して細胞周期進行を止める意義について研究を行っている途中である。 EPECの動物感染モデルとしては、マウスの腸管に感染するEPEc(Citrobacter rodentium)が頻繁に用いられる。そこで、本実験においても、C.rodentiumを用い、Cifが生体にもたらす影響を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Cifを発現するC.rodentiumと野生型のC.rodentiumを感染させたマウスで、予想と異なり大きな病理症状の差が見られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型のC.rodentiumと比べて病理症状に違いが現れてこない理由を特定し、EPEC感染におけるSCF制御の生理的意義を明らかにする(計画2の実行)。 また、定量的プロテオミクス法を用いて、計画3を実行する。
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