2011 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子AP-1と細胞表面受容体Ephによる骨形成制御機構の解析
Project/Area Number |
11J05156
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
入江 奈緒子 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 骨代謝 / 骨石灰化 / 骨芽細胞 / エフ受容体 |
Research Abstract |
受容体型チロシンキナーゼEphA2による骨石灰化制御機構解明を目指した。実験系にはEphA2欠損マウスやEphA2阻害剤、compound1(com1)と2(com2)を用いた。EphA2欠損マウスは対照群に比べ骨量が増加していた。また、未石灰化骨である類骨量が有意に減少し、EphA2欠損による骨石灰化亢進が考えられた。そこで成体長管骨培養系を樹立し、EphA2阻害剤を加えたところわずか24時間後にcom2存在下において、72時間後にはcom1とcom2の両者において、2次海綿骨密度が増加した。骨密度増加にともない培養液中のCa濃度が減少した。またCa指示薬カルセインの骨基質への取り込みが対照群に比べ増加した。カルセインラベル表面には活性型骨芽細胞が観察された。以上より、EphA2シグナル抑制により急速な骨石灰化が起こると考えられた。そこで、マウス頭蓋骨由来骨芽細胞をin vitroで分化誘導した成熟骨芽細胞に3日間EphA2/4阻害剤を加えたところ、濃度依存的にカルシウム沈着の亢進が認められた。EphA2欠損またはEphA2阻害剤添加後の骨芽細胞では、Caやリンを取り込み、ハイドロキシアパタイト結晶生成の場である基質小胞が対照群より大きい事を電子顕微鏡により観察した。大きな基質小胞ではALPの活性が増加した。膜タンパクcaveolin-1は、骨芽細胞にてEphA2/4阻害剤存在下でEphA2と相互作用し、基質小胞上に発現していた。さらに、caveolin-1の過剰発現により、基質小胞の巨大化と石灰化の亢進、EphA2阻害剤との付加的石灰化亢進を認めた。以上より、EphA2はcaveolin-1と相互作用し骨芽細胞の基質小胞の大きさを制御して骨石灰化を調節し、骨やミネラルの代謝を制御すると考えられた。現在、これらの研究成果をまとめた論文を国際科学雑誌に投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
EphA2の石灰化制御を解析する当初の期待より、明らかな急速な石灰化を認めたこと。また、急速石灰化の機構の一つとして基質小胞の大きさが大きくなっている事を見出した。さらには、分子メカニズムとして、EphA2がcaveolin-1と相互作用する事、さらにcaveolin-1も基質小胞の巨大化に寄与しEphA2欠損と付加的に骨石灰化を亢進することを見出した事は計画以上の進展であり、現在論文をまとめ掲載を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在得られている結果を補強するデータの蓄積に重点を置く。マウスin vivo骨解析でのマウスの数を増やし、骨量増加と類骨現象の表現系を確実にする。また、骨器官培養は、我々がはじめて行った実験であり、培養後の細胞のviabilityなどを確認する必要がある。これまで、主にEphA2欠損マウス、EphA2阻害剤を用いて実験を行ってきたが、その他のEphA2阻害ペプチドなどを用いて同様の効果が認められるかを検討する必要がある。既存の骨石灰化関連遺伝子のEphA2による制御の可能性を検討する。さらに、in vitroで認められたEphA2欠損骨芽細胞による基質小胞の巨大化がin vivoでも認められるか、北海道大学網塚教授の研究グループのご協力のもと電子顕微鏡を駆使し観察する予定である。
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