2011 Fiscal Year Annual Research Report
差分方程式の解の研究を動機とする差分代数の理論構築
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11J05166
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
西岡 斉治 青山学院大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 差分代数 / ポワンカレの乗法公式 / q差分方程式 / qパンルヴェ方程式 / 有理関数近似 / 代数的独立性 |
Research Abstract |
本年度は主に二つの事柄について研究した。一つは、ポワンカレの乗法公式が定義する関数についての研究で、有理関数による近似関数列を構成した。この近似関数列は単純な方法で作られ、局所一様収束する。有理関数のグラフを描くことはできるから、結果、関数のグラフの概形が得られる。ポワンカレの乗法公式は連立有理的q差分方程式に条件を付加したものと捉えられる。また、この方程式群には分解可能拡大の意味で既約なものが多く、その意味で新しい関数を定義していると言える。応用として、いくつかのqパンルヴェ方程式は適当に変形するとポワンカレの乗法公式になることが確認できる。このことから、qパンルヴェ方程式のいくつかの解に対して、そのグラフの概形が得られる。 もう一つの研究では、一階有理的差分方程式をみたす関数達の代数的独立性を判定する簡便な方法を得た。関数達が多変数代数方程式をみたさないとき、代数的独立であると言う。今回の判定法は方程式の有理式部分の次数のみを用いる。この場合の次数とは、分子の次数と分母の次数の最大値である。例えば、x、指数関数、ワイエルシュトラスのペー関数の倍角公式の有理式部分の次数は、それぞれ1、2、4と異なっているから、これらは複素数体上代数的独立である、といった具合である。一階有理的差分方程式の解は定義より必ず分解可能拡大に属し、また、有理式部分の次数が2以上のものは決して可解でないため、それらの間の違いが見えにくかったが、判定法により、次数を用いてクラス分けできるということがわかった。
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