2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子線励起法による窒化物半導体量子井戸構造を用いた深紫外レーザに関する研究
Project/Area Number |
11J05168
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大音 隆男 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 弱励起 / AlGaN/AlN量子井戸 / 局在励起子 / 誘導放出 |
Research Abstract |
今までは,励起光源として主に中心波長193nmのArF*エキシマレーザが用いられていたために,強励起条件下における光学特性の評価しか行われていなかった.しかし,高効率なインコヒーレントな深紫外発光素子を目指す上では,高Al組成AlGaN/AlN量子井戸の励起子の局在度合いや非輻射再結合過程を弱励起条件下で行うことが重要である.そこで,中心波長172nmのCW光源であるXe_2*エキシマランプを用いて弱励起PL測定系を構築し,光学特性の評価を行った.その結果,深さの異なる二つの局在準位に起因する発光特性が観測された.深い局在準位は今までの本研究室からの報告からAl組成揺らぎであると考えられる.また,浅い局在に関して詳細に理論的に検討を行ったところ,統計的に避けることができない混晶揺らぎの計算値と非常にいい一致を示した.以上から,弱励起条件において低温付近で得られた発光特性は混晶揺らぎを大きく反映していると考えられ,浅い局在準位は弱励起にすることで初めて観測に成功したといえる.また,この結果は強励起条件の理解を大きく促進させるものであると考えられる. さらに,電子線励起法を用いた深紫外固体レーザの実現に向けて,まずは光ポンピングでAIGaN/AlN量子井戸の誘導放出を実現することが必要不可欠である.そこで,高Al組成AIGaN/AlN量子井戸のedge PLの評価を行った.誘導放出に有利である構造を検討した後,へき開および端面のラッピングを行って共振器構造を作製し,ArF*エキシマレーザを用いて,edge PL測定を行った.井戸層のAl組成や井戸幅を変更して,edge PLを行ったが,誘導放出を実現するには至らなかった.原因としては,理論的に予測されているように,有効質量の増加等によって,発振閾値が大きく増加してしまっているからであると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
装置のトラブルが重なり,端面への誘電多層膜の蒸着や電子線に関連する実験およびデバイスの作製に関する検討がほとんど進んでいないのげ現状である.一方,その間に実施した弱励起PLの実験により,AlGaN/AlN量子井戸の光学特性の理解が大きく進展した.以上から,交付申請書に記載した目的の達成度はやや遅れているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
装置トラブルはほぼ解決したので,昨年度に進展した高Al組成AlGaN/AlN量子井戸の光学特性の評価,高品質な誘電多層膜の蒸着条件の検討,価電子帯バンド構造に着目した計算と構造設計を進めることによって,まずは誘導放出の実現を目指したいと考えている.誘導放出が実現できれば,誘導放出特性の評価と同時にデバイス設計も随時進めていく予定である.さらに並行して,弱励起から強励起までの発光特性を一貫して説明できるモデルを構築できるように,AlGaN/AlN量子井戸の光学特性の解析も進めていく予定である.
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Research Products
(5 results)