Research Abstract |
(1)励起子局在の起源 Xe2*エキシマランプを用いた弱励起フォトルミネッセンス(PL)測定によって,高Al組成AlGaN/AlN量子井戸には局在深さの異なる二つの局在準位が存在することが判明した.そこで,各局在準位の起源の同定を行った.定量的に解析するために,Al組成揺らぎ,井戸幅揺らぎ,統計的に避けることができない混晶揺らぎを計算し,実験的に観測された局在エネルギーと比較を行った.その結果,浅い局在準位は混晶揺らぎ,深い局在準位は井戸層の2ML揺らぎに起因していることが分かった.また,井戸幅の薄い井戸では,室温付近で2ML揺らぎ起因の深い局在準位に多くの励起子が流れ込み,明るく発光するという発光メカニズムを見出した.局在に関する知見は,デバイス応用にも直結するものであり,有用な結果が得られたといえる. (2)増幅された自然放出光の観測と光学利得 高Al組成AlGaN/AlN量子井戸からの誘導放出の観測を目指して,共振器構造を作製した試料において端面PLの励起密度依存性を行った.しかしながら,今回測定した範囲では誘導放出は観測できなかった.一方で,Al組成70%,井戸幅1.3nmの量子井戸において,励起密度に対してPL強度が超線形的に増加し,それに伴い半値幅が大幅に減少する様子が観測できたことから,増幅され自然放出光(ASDの観測に成功したといえる.また,光学利得を測定するために,励起長可変法の光学系を設計した.エキシマレーザの強度を空間的に均一化し,励起長を変化させた.Al組成79%,井戸幅5nmの10周期の量子井戸に対して,励起強度1MW/cm^2で光学利得を計算した結果,最大で60cf1の光学利得を得ることができた.今後,試料の構造の最適化や誘電多層膜の蒸着などを行い,誘導放出の実現に向けて研究を進める.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高Al組成AlGaN/AlN量子井戸の誘導放出は観測されていないが,増幅された自然放出光の観測に成功した.また,光学利得を測定する系を立ち上げたことから,AlGaN量子井戸の光学利得に関する知見が得られつつあり,誘導放出の実現に向けて大きく前進したといえる.また,AlGaN量子井戸の光学特性も大きく理解が進み,局在準位といった観点からも強励起特性の結果にフィードバックできる状況にある.以上から,研究はおおむね順調に進展していると考えている.
|