2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J05225
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐々木 亮 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ダルマキールティ / Vadanyaya / シャーンタラクシタ / Vipancitartha / nigrahasthana / badhakapramana / 仏教論理学 / ニヤーヤ学派 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ダルマキールティのVadanyaya(VN)の解読を軸に、このテキストと対立関係にあるニヤーヤ学派の諸文献を精査し、インド大乗仏教とニヤーヤ学派の思想的差違及び両者の影響関係を明らかにしつつ、VNの主要な討論術的概念である「敗北の条件」(nigrahasthana)の内容分析を図ることにある。また、研究推進に当たり、シャーンタラクシタのVNに対する註釈文献であるVipancitarthaを積極的に活用する。 VNはその構成上、asadhanangavacanaとadosodbhavanaという術語を用いて「敗北の条件」に対してダルマキールティ独自の定義が与えられる前半部と、ニヤーヤ学派の「敗北の条件」の定義に対して批判的検討が為される後半部とに分けられるが、この両部分が具体的にはどのような対応関係にあるのかという問題に関する先行研究は乏しく、この問題解明を主要課題とするところに本研究の特色がある。 本年度は、asadhanangavacanaに対する検討を中心にVN解読を進めた結果、ダルマキールティが、三種の証因・証因の三条件・擬似的証因等の自身の論理学的概念と、「敗北の条件」という伝統的な討論術的概念との接合をはかろうとしていたことが明らかとなった。ダルマキールティはasadhanangavacanaに対して五通りの語義解釈を与えるが、中でもその第一解釈は本質因・結果因・非認識因に関する多くの重要な問題を孕んでいる。それらの解読成果の一部として、VNにおける反所証拒斥認識手段(sadhyaviparyayebadhakapramanam)の規定を巡る諸問題について論文を発表した。今後は、引き続き伽前半部の内容分析を進展させつつ、それと併行してVN後半部の解読を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要研究対象として定めていたVNにおけるasadhanangavacanaの箇所は、梱全体の中でも特に多くの思想的問題を含むと予期されていたが、当初の計画以上に解読研究を進展させることができた。また、VN後半部についても局所的にではあるが解読を進められた。さらに、VN解読のための補助的手段としての、VN註釈文献及びダルマキールティの他の諸著作や、ニヤーヤ学派の諸文献の解読研究も順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き梱のasadhanangavacanaの箇所の解読研究を進展させると共に、adosodbhavanaの箇所の研究も進める。また、それと併行してVN後半部の解読を行い、次年度中にVNの暫定的全訳を作成することを当面の目標とする。その際、シャーンタラクシタのVNに対する註釈文献であるVipancitarthaを積極的に活用する。さらに、ダルマキールティの他の諸著作や、Nyayabhasya及びその註釈諸文献の解読を進めることによって、ダルマキールティとニヤーヤ学派との思想的差違、及び両者の影響関係の解明を目指す。そして最終的に、VN前半部とVN後半部が具体的にはいかに対応しているのかという問題の解決を図る。
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