2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J05227
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
須藤 圭 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 古代文学 / 中古文学 / 狭衣物語 / 源氏物語 / 異文 / 受容 / 享受 / 本文 |
Research Abstract |
本年度は、現存する狭衣物語写本を比較することによって、それぞれの写本がもつ特徴から、受容層や享受のあり方、読みの諸相を明らかにすることに努めた。主な研究実績は次のとおりである。 (1)京都大学文学研究科に所蔵される狭衣物語写本を調査した。 (2)東海大学図書館桃園文庫に所蔵される狭衣物語写本を調査した。 (3)国文学研究資料館所蔵の狭衣物語関連のマイクロフィルムを調査した。 (4)諸資料に記載された狭衣物語に関する記事を抜き出し、時代や場ごとの受容の諸相を調査した。 (5)立命館大学図書館西園寺文庫に所蔵される源氏物語写本を調査した。 上記(1)の成果を中心にして、学会誌に論文を発表した。京都大学文学研究科が所蔵する五冊本の『狭衣物語』に見られる異文を端緒にして、異なる本文が発生していく過程を探ったものである。そこでは、『狭衣物語』を通観する視点・解釈をもった上で改変された異文を見いだすことができ、異文もまた、『狭衣物語』の読みの諸相を伝えるものであることを明らかにした。 上記(2)から(3)の成果も、論文として公刊した。『狭衣物語』巻四に見える飛鳥井女君の詠んだ二首が、諸本によって大きく異なって示される要因を考え、狭衣物語受容の一端を明らかにした。この二首は、諸本により所収されていたり、あるいは所収されていなかったりするが、そのいずれにおいても、然るべき要因のもとでなされていることを解き明かした。 上記(4)は、この調査をもとに学会発表を行った。そのうち、特に、鎌倉期から南北朝期の連歌を対象とし、『狭衣物語』がどのように用いられていたかを明らかにした。また、調査の過程で新たに見いだした古筆切・断簡をもとに、そこから表出する受容の諸相にも言及した。 さらに、申請者が所属する狭衣物語研究会が主体となって刊行した『狭衣物語空間/移動』の合評会も行われ、その書評も担当した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
狭衣物語の写本に見られる叙述から、読みの諸相をうかがうことができることを明らかにできた。狭衣物語には多くの写本が現存し、本研究でとりあげきれていないものも複数存在するが、おおむね、本研究の目的である狭衣物語受容の一端を解明できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
狭衣物語の写本を対象とした研究が中心となったが、今後は、写本以外の享受資料も包括しながら調査を進めていく必要がある。とりわけて、本研究が目的とする受容層や享受のあり方を明らかにするためには、現存する資料を可能な限り活用していかなければならない。あわせて、新資料の紹介も順次行っていく予定である。
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