2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J05238
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
雲岡 梓 関西学院大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 連歌 / 『麗女独吟千句』 / 豊宮崎文庫 / 西山昌林 / 里村昌迪 / 擬古物語 / 王朝物語 / 古典 |
Research Abstract |
2011年度は、女流文学者荒木田麗女の作品の中で、連歌の活動に重点を置いて研究した。現代において麗女は歴史物語及び擬古物語によって有名であり、先行研究でもそれらの分野に注目したものが多く、連歌については詳細な研究がなされていない。しかし、麗女は幼少期から晩年に至るまで連歌に取り組み続けており、途絶えていた伊勢の豊宮崎文庫連歌会を再興する等、連歌に熱意を注いでいた。さらに連歌社中においては指導的役割を果たしている。有名な連歌師である西山宗因の曾孫西山昌林や、里村昌琢の子孫里村昌迪に師事する等、連歌を通しての有名な文人たちとの交流も多かった。このように、連歌は麗女文芸の基盤をなすものといえる。 そこで、麗女の連歌作品『麗女独吟千句』を中心として、その成立事情、典拠となった古典作品、手引きとした類題集等を明らかにし、麗女の連歌における特徴を考察した。 その結果、『麗女独吟千句』の特徴は本歌・本説に強く依拠した句作態度と、それを支える詳細な自注であると結論づけられた。作中のほとんどの句には古典から典拠が求められ、歌書においては『夫木和歌抄』、『万葉集』、『新撰和歌六帖』、『拾遺和歌集』、物語においては『源氏物語』『宇津保物語』、『伊勢物語』、『狭衣物語』、『栄花物語』、『大和物語』等から着想を得ていることが判明した。数多くの擬古物語を執筆し、自らの作品中に王朝物語の世界の再現を目指した麗女は、連歌においても様々な古典作品を典拠として、独吟千句の中に古典世界の再現をもくろんだとの結論が得られた。以上の成果を、俳文学会第63回全国大会において発表した。 また、擬古物語の分野においては、従来散逸したものとされていた平安王朝を舞台とする物語『をだまき』が、石水博物館に所蔵されているのを発見し、調査を行った。その結果、『をだまき』の成立事情や、その内容が『源氏物語』「須磨」巻に強い影響を受けていること等が判明した。そして得られた結果と全文の翻刻を、『人文資料研究』に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
荒木田麗女の著作について、擬古物語・連歌・俳譜・漢詩・国学・紀行文等のそれぞれの分野の特色を考察する計画であり、2011年度は連歌について重点的に研究した。その結果、麗女の生涯における連歌活動の概要や、連歌師たちとの交流、連歌師としての評価及び、麗女における連歌文芸の特色を明らかにすることができた。 また、擬古物語の分野においても、散逸したと考えられていた作品『をだまき』を発見することができ、『源氏物語』からの影響を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、荒木田麗女と国学の関係に重点を置いて研究する。麗女は本居宣長と、麗女の擬古物語『野中の清水』をめぐって論争を行い、対立したことで有名である。しかし、その他の国学者との交友関係については不明な点が多い。そこで、麗女の自伝や随筆等から国学者との交流について調査し、麗女の国学における学統や、国学者たちとの影響関係を考察する。 また、麗女の著作とされているが、その真偽の疑われる書物、『真字古今集をあけつろひし詞』について調査し、その作者を特定する。
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