2011 Fiscal Year Annual Research Report
^2H(t,^3He)nn,^2H(^3He,t)pp測定を用いた荷電対称性の破れの研究
Project/Area Number |
11J05273
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三木 謙二郎 大阪大学, 核物理研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 核力 / アイソスピン / 少数核子系 |
Research Abstract |
本年度は、研究目的である核力のアイソスピン依存性の解明に則し、まずは二核子散乱長の決定方法について、核反応理論計算を用いた検討を行った。具体的には、平面波インパルス近似の手法と有効散乱長理論を用いて、^2H(t,^3He)nn,^2H(^3He,t)pp反応に関する励起エネルギースペクトルを計算し、それらの散乱長依存性を調べた。その結果をもとに、実験に必要とされる精度を見積もり、その実現に向けて実験装置の検討を行ってきた。同時に、反応計算の精度向上のため、四川大学(中国)の研究者も交えて(t,^3He)反応計算についての議論を行った。その成果の一部は、日本物理学会で公表した。 その一方で、核力のアイソスピン依存性を明らかにする新たな発展的アプローチとして、^4He(p,dp)反応測定を通した核内テンソル力の研究も推進してきた。測定に必要となる実験条件をまとめ、大阪大学核物理研究センター(RCNP)に対して実験課題申請を行った。二週間にわたる長期間のビームタイム申請であったが、実験の物理的意義が十分に認められ全日程が採択された。採択後は、実験に使用する実験装置の準備に取り掛かった。実験では高ルミノシティ条件が必要とされるため、標的として加圧冷却ガス標的(温度10K,圧力3気圧)を用いる必要がある。本年度は、1)冷却装置のテストおよび保守・改良、2)低温高圧条件を維持できる標的セルの検討、3)ビームタイム中に常時ルミノシティを測定するためのプラスチック検出器の開発、に着手した。 これらの研究と並行し、理化学研究所に於いて当該研究課題に関連した共同研究(三体力の検証実験、中性子四体系の探索実験)も遂行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、計画通りまず^2H(t,^3He)nn,^2H(^3He,t)pp反応についての原子核反応計算に着手した。スペクトルの散乱長依存性を見出すことに成功し、この方法を用いた散乱長の実験的決定について道をつけた。さらには当該研究の新たな展開として^4He(p,dp)反応測定を大阪大学核物理研究センターに提案し、高い評価を受けて長期のビームタイムが認められている。採択後、実験に向けた準備も順調に進んでいる。これらの状況から、当初の想像以上の成果が挙がっていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、^2H(t,^3He)nn,^2H(^3He,t)pp反応測定については、これまでに得た原子核反応計算を参考に、実験の実現に向けて引き続き実験装置の検討・開発に取り組んでいきたい。それと同時に、^4He(p,dp)反応測定については、実験に必要な冷却装置の改良、標的セルの開発を行った後、大阪大学核物理研究センターにて実際に実験を遂行する予定である。
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