2012 Fiscal Year Annual Research Report
2H(t,3He)nn,2H(3He,t)pp測定を用いた荷電対称性の破れの研究
Project/Area Number |
11J05273
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三木 謙二郎 大阪大学, 核物理研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 核力 / アイソスピン / 少数核子系 |
Research Abstract |
計画に沿い、核力のアイソスピン依存性を明らかにすることを目標として研究を進めた。具体的には、(3He,t),(t,3He)反応を用いた二核子散乱長測定、および(p,dp)反応による核内テンソルカの働きの解明を推進してきた。 前者については、原子核理論研究者との議論を継続し反応機構の理解を深めた。その成果の一部は投稿論文(Phys.Rev.Lett.)において公表した。 後者については昨年度から続けている加圧型冷却4He標的システムの開発を続け、測定に必要となる温度10K圧力2atm下での作動に成功した。この標的システムを用い、400MeVにおける4He(p,dp)反応測定の実証実験を大阪大学核物理研究センター(RCNP)にて遂行した。入射エネルギーが高いことや特殊な運動学条件が必要とされるためにバックグラウンド量の多い難しい測定であったが、検出器・信号処理回路の工夫を行うことで信頼度の高いデータの取得に成功した。その最初の成果として、原子核内で高い相対運動量(315MeV/c)を持つ陽子-中性子ペアに着目するとその大部分がスピン1を持つ、という興味深い結果を得ることができた。これはテンソルカが陽子-中性子間に特に強く働いていることを示唆するものである。この結果について、少数核子系国際会議(Few-Body20)において口頭発表を行い、その内容をまとめたものをFew-Body Systems誌上に公表した。現在国内外の研究者とさらに議論を深めているところである。一方で、今後の実験条件の改善を目指し実験装置の改良も推進した。具体的にはビーム強度の増強、バックグラウンドの低減による測定効率の改善を目的とし、RCNPの磁気分析器およびビームラインの改造を提案した。本年度は特に双極・四重極磁石の設計・シミュレーションを行い、必要性能が得られることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、(3He,t),(t,3He)反応測定についてはその反応機構の理解が非常に進展し、既に結果の一部が投稿論文に公表されている。さらに、当該研究の新たな展開である4He(p,dp)測定についても、実証実験の成功に漕ぎ着け、成果を国内外の学会・誌上にて公表している。内容についても他の研究者から好評を受けている。以上のことから、現状では当初の計画以上に進展していると結論付けられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、現在検討中のRCNP実験装置改良計画に目途をつけるとともに、4He(p,dp)実験について本測定を行い、テンソルカが4He原子核構造に与える影響についてスピン・アイソスピン依存性の観点から議論、結果を公表したい。2H(t,3He)nn,2H(3He,t)pp反応測定についても、これまでの議論で得た知見を用いて引き続き実験の遂行・成果の公表を目指す。
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