2011 Fiscal Year Annual Research Report
日米の表現の自由論の原理論レベルでの差異と緊張関係の研究―表現主体論の視点から
Project/Area Number |
11J05305
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
城野 一憲 早稲田大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 表現の自由 / アメリカ憲法学 / 違憲審査基準論 / 修正1条の制度主義 |
Research Abstract |
表現活動の多様化と政府による表現規制の複雑化という表現活動を取り巻く現代的状況の下では、自由な表現活動の保障のための実効的な理論装置が考案されなければならない。上記のような問題意識に基づき、アメリカ憲法学における「制度主義」の理論について、特に、フレデリック・シャウアーとポール・ホーウィッツという「制度主義」を積極的に検討している論者の著述を中心に分析を行い、論文を公表した。 論文の内容は、1)修正1条解釈の方法論的代替案を提示しているホーウィッツの「制度主義」の整理、2)ホーウィッツの「制度主義」の特徴である動態的な"institution"観と、司法敬譲の理論に向けられる批判や懸念の一部の確認と検証、3)「制度主義」の実益の検証、の三点である。 「制度主義」は、アメリカ連邦憲法の修正1条解釈において、社会に群居している各種の主体を"institution"として裁判において積極的に同定し、その自律的な判断に対する司法敬譲を要請する理論である。その中でもホーウィッツの「制度主義」は、アメリカの社会や憲法秩序への各種の"institution"による貢献と、"institution"内部の自主的な規範の形成について、裁判所がこれをケース・バイ・ケースで判断していくという、動態的なものである。多元的な憲法秩序を想定したホーウィッツの「制度主義」の問題意識は、日本でも共有可能と思われるけれども、司法制度の差異や、「制度主義」の持つ個人の等閑視という点で、受容が難しい部分も有している 「制度主義」の分析からは、アメリカ法における法的思考の方法論という、より原理的な論点も抽出された。この点で、本研究は日米の表現の自由理論の原理的な差異と緊張関係を解き明かす上で重要であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、上記のように交付申請書に記載した計画に沿って論文を公表することができたため、研究は進展していると言ってよいと思われる.ただし、本年度の研究成果を基礎とした平成24年度の研究に向けた準備作業には、いまだ着手していないため、達成度は(2)が妥当と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に蓄積、公開した「修正1条の制度主義」についての知見をふまえつつ、各種の"institution"に関する各論的な検討を行う予定である。また、新たに確認した、法的思考における方法論という論点についても、表現主体論と並行して、文献資料の取集と分析を行い、論文を公表する予定である。
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Research Products
(1 results)