2011 Fiscal Year Annual Research Report
加齢に伴う身体能力の自己認識低下が心身機能に及ぼす影響とその脳機能特性の検討
Project/Area Number |
11J05365
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
桜井 良太 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高齢者 / 跨ぎ越し動作 / 自己能力評価 / 転倒 / 脳機能 |
Research Abstract |
本研究は、高齢者の跨ぎ越し動作における自己の身体能力に関する評価(自己能力評価)の正確性が、高齢者の生活や心身機能にどのような影響を及ぼすか明らかにし、その脳機能的背景を、PET(Positron Emission Topography)を用いて明らかにすることを目的としている。 H23年度は、高齢者の跨ぎ越し動作における自己能力評価の正確性と転倒経験の関連性を大規模サンプルにより横断的に検討した。本研究で用いた跨ぎ越し判断テスト(自己能力評価検査)では、参加者の7m前方に跨ぎ越し用のバーを水平に設置し、上下に移動させ、実験参加者が跨ぎ越せると思う最大の高さを跨ぎ越し判断の最大値(予測高)として測定記録した。その後、実際にその高さのバーを跨がせ、実際に跨ぎ越せた最大の高さ(実測高)を測定した。実験には494名の健常高齢者および71名の若年者が参加した。予測高と実測高を比較した結果、若年者では予測高を全員が実際に跨ぎ越せたのに対し、11.4%の前期高齢者および32.5%の後期高齢者は予測高を実際には跨ぎ越すことができなかった。さらに過去1年間に転倒を経験している高齢者(転倒群)と非経験者(非転倒群)における予測高と実測高を比較したところ、予測高には両群間に有意な差が認められなかったのに対し、実測高では転倒群が非転倒群に比べ有意に低い実測高を示したことが明らかとなった。したがって、転倒経験者は自身の身体能力の低下を的確に認識することができず、結果的に跨ぎ越し能力を過大評価していた可能性がある。また、転倒群では予測高を跨ぎ越せない高齢者(跨ぎ越し能力を過大評価)が非転倒群に比べて有意に多いことも示され、高齢者の転倒原因の一因が身体能力の低下の誤認識(過大評価)にある可能性が示唆された。 並行して、跨ぎ越し判断テスト参加者を対象にPETを用いて脳機能画像データを収集し、現在までに96名のデータを得た。データ解析が終了次第、跨ぎ越し判断テストとの関連性を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は高齢者300名を目標対象者数としたが、2012年3月までに約500名の高齢者データを収集し、目標を大幅に上回る大規模サンプルによる高い信頼性のもとに、高齢者の跨ぎ越し動作における能力評価の正確性と転倒経験の関連性を横断的に検討することができた。したがって、本研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は高齢者の跨ぎ越し動作における過大評価と転倒発生の因果関係を検討するため、跨ぎ越し判断テスト参加者に対し追跡調査を行う。並行して、高齢者の自己能力評価の正確性と脳機能との関連性を検討するため、PETデータの収集および解析を進める。当初計画では、自己能力評価の正確性と脳機能との関連性を検討のためにPETとfMRIの両者を用いることを予定していたが、予算面や研究補助員等の確保の面で支障が出て来ることが予想され、PETのみを用いることとした。PETは全脳を均一に再現性良く定量的に計測できる点に特徴があり、本研究における脳機能の検討にはよく適しており、fMRI測定を省いても特に大きな支障は生じない。
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Research Products
(6 results)