2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J05515
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
粂 汐里 立教大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 小栗判官 / 藤沢 / 寺院 / 縁起 / 時宗 / 和讃 / 千光寺 / 金沢八景 |
Research Abstract |
平成23年度は「研究計画」で示した「(1)説経正本および関連する文化財の悉皆調査」を主に行った。以下は調査地である神奈川県内の1~3の三か所の概要および成果である。 1、神奈川県藤沢市辻堂・茂兵衛資料館所蔵和讃資料(石井家文書)調査 茂兵資料館が所蔵する55冊の和讃帳の書肆調査・目録作成・翻刻を行った。目録化した書肆データと、半数の資料の翻刻は所属大学の紀要に掲載した。また、石井家の蔵書形成に関連する資料を有する横浜出張所大聖院、寒川文書館の調査も行った。この成果は来年度報告する予定である。 2、神奈川県藤沢市西富・長生院小栗堂調査 時宗総本山清浄光寺宝物館、および、その境内にある小栗堂が所蔵する関連資料の調査を行った。従来の縁起資料に新たに発見した伝本を加え小栗堂の活動状況を整理し、小栗堂から藤沢市内の他地域への信仰の伝播の過程を考察した。また、近年まとまった成果を見せている清浄光寺の日鑑類に基づき、縁起を媒介とした関東の時宗寺院の連携について分析した。 3、神奈川県横浜市金沢区六浦・千光寺調査 近世の旅中日記に頻出する千光寺について、現在の状況と所蔵資料の調査を行った。近世の度重なる火災により文書の大半は焼失していたが、昭和十年に記録された寺院文書の抄出本を調査し得た。未紹介であった上記の資料と、2008年『金沢文庫研究』321号に紹介された金沢の観光案内書にみえる千光寺の様子を照合し、金沢一帯の参詣者を募る寺院、案内書を刊行する書肆、旅籠屋らの活動と軌を一にし、縁起を流布させてゆく様子を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
藤沢地域における調査予定地は順調に終えることが出来た。その後、採集した資料を整理、分類し、地方-中央間の人と物の移動状況を確認するまでは終えたが、中央文化との接点など、全国的なレベルでの分析までには至っていない。今後、この点について一地方である藤沢の資料のみならず、中央の資料も参照しながら、確認できた資料の意義について報告したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、主に近世後期の在地資料を研究対象に、藤沢という一地方に文化か根付いてゆく過程を考察してきた。今後は、視点を近世前期に移し、どのような階層で説経および語り物が享受されていたのか見てゆく。具体的には近世初期に制作されたと目される岩佐又兵衛古浄瑠璃絵巻群を対象とする。大名家所蔵本として注目されてきた絵巻群を、上層文化から基層文化までの幅広い享受層に着目して読み解き、これまでの特権化された絵巻の位置づけに新たな視点を見出したい。上記の検証を通して、地方の享受のみに偏りがちであった今年度の取り組みを改善できると考えている。
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Research Products
(5 results)