2011 Fiscal Year Annual Research Report
マウス嗅球の左右対称な二つの匂い分子受容体地図による匂い情報処理機構の解明
Project/Area Number |
11J05606
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
家城 直 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 嗅球 / 軸索投射 / 匂い地図 / 電気生理学 |
Research Abstract |
マウスの一次嗅覚野である嗅球では、同じ匂い受容体を発現する嗅上皮の嗅細胞群が嗅球の左右対称に位置する二つの「糸球」に収束することから、左右対称な二つの「匂い分子受容体地図」(medial mapとlateral map)が存在している。この一つの嗅球内の二つの「匂い地図」が、片側がダメージを受けたときに補完するためにあるのか、それとも全く異なる二つの別々の匂い情報処理をするためのものなのか、については全く解明されていない。 二つの「匂い地図」の機能的違いを解明するため、今年度は電気生理学的手法を用いてmedial mapとlateral mapの同じ匂いに対する応答特性の違いについて、重点的に調べた。具体的には、「左右の同じ匂いに応答するニューロン群は嗅上皮の異なる領域に分布することから、呼吸をしたときに匂い分子が両方の嗅覚受容体に到達するまでに時間差が生じるのではないか」という仮説に基づいて実験を行った。 これまでに、二つの地図(medial mapとlateral map)では、 (1)Medial mapの糸球の匂い応答のほうがlateral mapの糸球の匂い応答よりも呼吸の吸気の流速によって応答のonset latencyが変化しやすい傾向がある (2)Medial mapの糸球の匂い応答のほうがlateral mapの糸球の匂い応答よりも、一呼吸ごとの匂い応答の順応が起こりやすい傾向がある という2点が観察されてきている。 今後、異なる種類の匂い分子や異なる嗅球上の糸球においても同様の傾向が見られるかどうかを実証し、さらにこれらの性質の違いが発生するメカニズムについても迫っていく。また、来年度は二つの匂い地図による嗅皮質への軸索投射についても研究をさらに進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の大きな目的である、二つの「匂い分子受容体地図」の機能的な違いについて、新たな知見が得られてきており、今後さらに実験数を重ねることで見られている現象が実証されると考えられるため。また、今後進める予定である「軸索投射の違い」の実験についても、予備段階ではあるがデータが得られてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、今後も二つの「匂い分子受容体地図」の機能的な違いについて調べるため、電気生理学的実験を行っていく。電気生理実験の技術的な困難があるときには、マウスの代わりにより大きな脳をもつラットを用いて実験を行う予定である。また、来年度は今年度の成果を実証するとともに、二つの匂い地図の嗅皮質への軸索投射の違いについても迫っていくため、神経細胞の軸索トレーシング実験も行う予定である。これらの結果をまとめ、論文化することも展望の一つである。
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