2012 Fiscal Year Annual Research Report
超越論的観念論的現象学と実在論的現象学に関する統合的研究の構築
Project/Area Number |
11J05611
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
植村 玄輝 立正大学, 特別研究員SPD
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Keywords | 現象学 / 超越論的観念論 / 実在論 / 形而上学 / 志向性理論 / 行為論 / フッサール / ミュンヘン・ゲッチンゲン学派 |
Research Abstract |
今年度は、以下の四つのテーマに即して研究を行った。 (1)超越論的観念論の形而上学的含意 (2)後期の行為論化された現象学 (3)エディット・シュタインによるプフェンダーとライナッハの理論の統合 (4)知覚の志向性に関するインガルデンの理論 (1)については、超越論的観念論の形而上学的含意を「スーパーヴィーニエンス」という現代形而上学の概念を用いて解明する最近のフッサール解釈をとりあげ、この解釈が、その不十分さにも関わらず、超越論的観念論の形而上学的含意を明らかにするための出発点として有益であること明らかにした。また、超越論的観念論の形而上学的含意を、様相に関する現代形而上学の議論を踏まえてより積極的に明らかにする研究も行った。(2)については、フッサール文庫で現在編集作業中の意識の構造に関する草稿群のうち、行為と意志に関するものを調査し、後期フッサールの行為論化された現象学の基本的な発想を明らかにした。(c)では、シュタインの志向性理論に注目することによってライナッハからインガルデンに至る志向性理論の発展の中にプフェンダー的な観点を統合することが可能になることを明らかにした。また、後期フッサールの行為論化された現象学が(純粋意識よりも)「人Person」を重視している点を考慮するならば、同じく「人」を中心概念としたシュタインの志向性理論の研究は、二つの現象学の対立を扱う最終年度の研究に向けた予備作業として大きな意義のあるものであったといえる。(d)に関しては、インガルデンの知覚論が、コンラート=マルティウスからの強い影響化で、フッサールの観念論的な立場を克服するような議論を提出していること、さらにその議論が、シュタインの志向性理論では簡単に触れられるにすぎなかった、「認識主観の世界からの因果的制約」という論点に関わることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究計画変更に伴い今年度も計画からの変更が生じたが、「後期フッサールにおける行為論化された現象学」と「実在論的現象学における志向性理論の発展」という二年間で予定されていた研究を期間内に進めることができた。さらには、この研究成果の一部は第三年度に計画された研究の成果と見なしうるものであり、その点では本研究は当初の計画以上に進展していると言えるかもしれない。とはいえ、成果の公表状況に遅れが出ているため、総体的にはおおむね順調に進展していると判断するのが妥当であるように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」欄で言及した成果の公表状況の遅れを取り戻すべく、来年度は当初の計画よりも研究発表および論文作成に若干多くの時間を割くつもりである。上で述べたように、現在までに本研究は今後実施される予定であった研究の成果を部分的に先取りしている。そのため、時間配分に関するこうした変更は、総体的には研究計画からの遅れを生じさせないように思われる。
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