2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムワイド関連解析を用いたイヌの気質・行動関連遺伝子の探索
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11J05679
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
桃沢 幸秀 独立行政法人理化学研究所, 多型解析技術開発チーム, 特別研究員(PD)
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Keywords | イヌ / 気質 / 行動 / ゲノムワイド関連解析 / LUPAプロジェクト / CBARQ / MCPQ-R |
Research Abstract |
イヌの遺伝性疾患について、ヨーロッパ共同で研究が行われているLUPAプロジェクトの協力を得て、ベルギー国リエージュ大学獣医学部・GIGAリサーチセンターにおいて研究を遂行した。 1.LUPAプロジェクトにおいて解析が行われているイヌの気質・行動データを飼い主から取得するために、ウェブ上に信頼性・妥当性がすでに示唆されているCanine Behavioral Assessment&Research Questionnaire(CBARQ)およびMonash Canine Personality Questionnaire-Revised(MCPQ-R)の2つの評価法を構築した。研究開始時点において完成していた英語、オランダ語、フランス語の3カ国語に、ドイツ語、デンマーク語、フィンランド語を追加した。この評価法を用いて、現在まで94頭のデータを取得した。 2.気質・行動と関連の深い形質を明らかにするとともに、それらと関連する遺伝子を同定するために、健康なイヌの正常時心拍数・心電図や血液・尿中の各種パラメーターについてのデータを、5ヵ国の臨床獣医師の協力を得て11犬種541頭から得た。ほとんどの形質において、明確な犬種差が認められた。これらの形質は、獣医療において診断を行う際に用いられるものであるが、各犬種の正常値については情報が不足しているため、重要なデータであると考えられる。また、犬種を超えて保存されている形質間の関係を明らかにするために、データの犬種差を考慮した解析を行っている。 併せて、ゲノム全体をカバーする約17万個のSNPについて遺伝子型を取得し、遺伝子型データの品質チェックおよび遺伝子型から純血ではないと想定される異常個体を排除した上で、各形質に及ぼす遺伝的な影響を犬種差・コホート差を考慮したゲノムワイド関連解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の1については、予定通りである。2については、予定より早くデータの収集が終了し解析に移行しているため、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、2つの問題点が挙げられる。気質・行動は、遺伝および様々な環境の影響を受ける複雑形質であると考えられるが、どのくらいの遺伝子がどのように関与しているかについては、イヌにおいては現在までのところ不明である。そのため、気質・行動に関連する遺伝子を同定する上で必要な頭数・犬種数などの情報が明確ではない。また、ゲノムワイド関連解析は主に単一の人種・系統に対して解析を行うために発展し、遺伝的背景の大きく異なる複数の犬種について、明確な犬種差がある表現型をも考慮して解析を行う手法については十分に発展していない。そのため、今回のサンプルについて適用可能な統計手法の確立も必要である。そこで、次年度は、健康なイヌ541頭から得られた様々な形質についてのゲノムワイド関連解析を中心に進め、上記の2点について対処する予定である。
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