2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中患者に対する両肢間転移を応用した内的なNeuromodulationの開発
Project/Area Number |
11J05791
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木内 隆裕 京都大学, 医学研究科, 特別研究員DC2
|
Keywords | リハビリテーション / 運動学習 / 両肢間転移 / 脳磁図 |
Research Abstract |
本研究の目的は,(a)両肢間転移の応用によって1人称的・運動感覚的イメージを導き,その運動イメージを用いた介入で運動を改善させることが可能か,また,(b)運動イメージを介さずに両肢間転移のみによって運動を改善させることが可能か,を明らかにし,その後(c)これら2つの介入を一定期間行った場合はどちらの手段がより効果があるか,を明らかにすることである.これらの目的に対し,行動実験と脳磁図を用いた神経生理学実験を行う. 昨年度はこれらのうち,まず(b)に関する予備実験を行った.対象は若年成人22名とし,訓練群11名,コントロール群11名に割り付けた.それぞれ介入前後に左手関節の背屈運動速度を計測し,その変化をアウトカムとした.訓練群に対しては介入課題として右手関節の背屈運動訓練を,コントロール群に対しては運動イメージを伴わずに安静にすることを指示した.この実験の結果,右手関節の瞬発的な運動訓練は,運動訓練を全く行っていない左手関節の運動速度を向上させることが明らかとなった.これは運動速度において右手から左手への両肢間転移が生じていることを意味し,本研究の実現可能性を高める重要な結果であった.次に,この両肢間転移に関わる神経基盤(脊髄より高位の神経が関与するとされる)を明らかにするため,脳磁図計測による実験へと進んだ.この実験においてはStimulus-induced 20Hz reboundを計測パラメータとして計画していたが,その日差変動が予想を超えて大きかったため,申請時に第2の計測パラメータとして計画していたMovement-related cortical fieldとMovement-related synchronization/desynchronizationを用いることとなった.これらをアウトカムとして利用するため,近年開発されたMaxFilter^<TM>(空間フィルタの一種)の最適な設定を確立する必要があったが,探索的な解析によって妥当な設定を決定することができた.現在は予備実験が終了しており,今年度は早急に本実験を行っていく予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)MaxFilter^<TM>(空間フィルタの一種)が改良されてからまだ時間が経っておらず,その最適な設定を決定するために時間をかけて探索的な検証作業をせざるを得なかった.(2)脳磁図計を格納している建造物の耐震補強工事が行われたことや,脳磁図計自体の故障があったことなどから,実験を十分に行うことができなかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
上記(1)に関しては,現在すでに問題が解決しており,被験者を募集して実験データを蓄積していく段階にある.上記(2)に関しても,すでに耐震補強工事が終了していることや,最近は脳磁図計が良好に稼働していることなどから,今後は障壁にならないと思われる. 今年度は,まず脳磁図計を用いた神経生理学実験を進め,上記「9.研究実績の概要」の目的(b)に関して,両肢間転移の神経基盤を明らかにする.また,これと並行して上記の目的(a)に関する,運動イメージの行動実験を行っていく.この行動実験に必要な評価方法もすでに確立しており,脳磁図計を用いた実験が軌道に乗り次第,被験者を募集していく.
|