2011 Fiscal Year Annual Research Report
出土木製品の用材分析に基づく中世・近世森林資源利用史の研究
Project/Area Number |
11J05811
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鈴木 伸哉 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 江戸 / 近世 / 木製品 / 樹種 / 年輪 / 森林資源 / 木材利用 |
Research Abstract |
中世・近世の関東地方における都市住民と森林資源との交渉の歴史を、遺跡出土木製品・木材の用材分析に基づき明らかにすることを目的として研究をおこなった。おもな成果としては以下の3件がある。 [上野寛永寺徳川将軍家墓所出土木棺・木槨や副葬品の樹種同定結果を報告] 近年おこなわれた発掘調査によって出土した、徳川将軍家の埋葬施設を構築した木棺・木槨や、副葬品の香木などの樹種を同定し、将軍家という、当時の最高位の身分・階層における用材の一端を明らかにした。寛永寺将軍家裏方墓所から出土した埋葬施設には、将軍家という高い身分・階層に特有の良材選択が認められた。また、希少な香木などの副葬品からはこうした人びとの所持品の様相を伺い知ることができる。一方、数珠玉や櫛などの副葬品類には、他の近世遺跡でこれまでに確認された江戸の一般都市住民の所持品と共通する用材選択がなされているものもあるなど、身分や社会的階層の差異に拘束されない適材選択がなされていたことも明らかになった。 [東京都内の近世遺跡から出土した木製品に見られる南洋材の利用を発表] 東京都内では近年の発掘調査やそれにともなう木製品の樹種同定の事例の蓄積により、出土遺物中に南洋材や東南アジア産の種実を用いた製品が確認されるようになってきた。そこでこれらの木製品を集成し、その傾向について若干の検討を加え、現時点までに明らかになった南洋材の利用の様相をまとめ、発表した。 [新宿区崇源寺跡出土木棺材の樹種同定および年輪幅の計測結果を報告] 新宿区崇源寺跡の墓地遺跡から出土した木棺材の樹種同定・年輪幅の計測およびそれらを総合した考古学的分析をおこない、木材利用の時期的変遷、身分・階層による用材選択の傾向を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は基礎となるデータの作成と公開を中心として研究をおこなった。当初今年度に予定していた個別課題のうち、若干の内容の変更を経ながら前述の3件については概ね達成し、残り2件、すなわち中世鎌倉の出土木製品調査については着手または調査対象選定に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は引き続きデータの作成をおこなうとともに、分析によって得られた成果をまとめ、公開することを予定している。作業の迅速化のため、協力機関および研究者との連携をさらに緊密にする。 本研究は遺跡出土資料を主たる調査対象としている。そのため、研究開始後に新たに発見された資料もあるが、これらを研究対象に加えた方が適当と思われる場合は、その機を逃さずに柔軟に対応する。
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Research Products
(2 results)