2012 Fiscal Year Annual Research Report
出土木製品の用材分析に基づく中世・近世森林資源利用史の研究
Project/Area Number |
11J05811
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鈴木 伸哉 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 江戸 / 鎌倉 / 木製品 / 樹種 / 年輪 / 森林資源 / 木材利用 / 産地同定 |
Research Abstract |
中世・近世の関東地方における都市住民と森林資源との交渉の歴史を、遺跡出土木製品・木材の用材分析に基づき明らかにすることを目的として研究をおこなった。今年度はこれまで蓄積したデータの公開および研究の概報を中心として取り組んだ。おもな成果としては以下の3件がある。 [東京都内・神奈川県内遺跡出土木製品の樹種同定結果を集成] これまでに報告されている東京都・神奈川県における中世以降の遺跡出土木製品・木材の樹種同定結果を集成し、中世の鎌倉・近世の江戸という南関東の都市における木材利用の様相およびその変遷について報告した。集成の結果、東京都内の事例は約2万8千点を数えた。このなかには土木・建築材や、桶・樽、漆器、櫛や数珠などさまざまな木製品が含まれ、それぞれの用材傾向の概略が明らかになった。 [都内の近世墓地遺跡から出土した木棺材の樹種同定・年輪年代学的検討の成果を発表] 東京都新宿区崇源寺跡の2次調査地点から出土した17世紀後半から19世紀の木棺305基の構築材617点の樹種を同定し、年輪を計測した。木棺材の樹種と年輪には時期差が認められ、当該地域の近世の木棺には、17世紀後半から18世紀初頭頃まではヒノキやサワラ、アスナロなどの大径木が盛んに利用されていたのが、概ね18世紀代に、アカマツやスギなどの樹種の中径木の多用へと変化したと考えた。 [江戸の木材利用と当時の森林植生との関わりについて報告] 「近世の森林植生と木材利用」と題した発表をおこなった。発表内容は上述の2つの話題に加え、墨田区弘前藩津軽家上屋敷跡における年輪年代学的検討の成果について発表し、研究の現状についてまとめるとともに、今後の近世遺跡の調査においては樹種同定に加えて年輪年代学的検討をおこなう余地があることを、具体例とあわせて報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はこれまで蓄積したデータの公開および研究の概報を中心として取り組んだ。当初、今年度に予定していた個別課題は、若干の内容の変更を経ながら概ね達成するか、着手および成果の一部公開に至っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続きデータの作成をおこなうとともに、分析によって得られた成果をまとめ、公開することを予定している。作業の迅速化のため、協力機関および研究者との連携をさらに緊密にする。 本研究は遺跡出土資料を主たる調査対象としている。そのため、研究開始後に新たに発見された資料もあるが、これらを研究対象に加えた方が適当と思われる場合は、その機を逃さずに柔軟に対応する。
|
Research Products
(4 results)