2012 Fiscal Year Annual Research Report
鉄系高温超伝導体に対する理論的考察:ペアリング対称性と超伝導機構の解明に向けて
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11J06067
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
増田 啓介 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄系高温超伝導体 / 多軌道超伝導体 / 重い電子系 / s波超伝導 |
Research Abstract |
我々の研究対象である鉄系高温超伝導体は多軌道性を有することが知られている。この物質群の発見以前に存在していたほとんどの超伝導体は単一軌道超伝導体であったために、物質が多軌道性を有する場合にどのようにして超伝導秩序が生じるのかという問題に関しては未だ解決していない問題が数多く存在する。昨年度は、このような多軌道系物質における超伝導の起源について研究を行った。鉄系高温超伝導体においては5つの3d軌道がフェルミ準位近傍で複雑に絡み合っているために最低でも5軌道模型を用いて解析を行う必要がある。しかしながら計算コスト等の問題で、このような5軌道模型を用い超伝導相を詳細に解析することは容易ではない。そこで我々は23年度に引き続き、よりシンプルな多軌道系(おおむね2軌道系)である重い電子系に着目し、この系における超伝導について解析を行った。23年度の研究において、我々は伝導電子と局在したf電子がクーパー対を組むことによって(1軌道斥力系では発現し得ない)多軌道斥力系に特有のs波超伝導が発現しうることを提案した。昨年度はこの研究をさらに推し進め、このようなs波超伝導がどのような状況において起きやすいかという点に焦点を絞り、詳細な相図を作成した。そしてこれまでに得た成果をまとめ、韓国の釜山で行われた国際磁気学会(ICM2012)で発表を行い、また国際誌(Physical Review B)に論文を発表した。このような発表活動に並行して、我々はこれまで用いてきた平均場近似の弱点を補うことが可能な変分クラスタ法を習得し、この新手法を用い重い電子系におけるs波超伝導に関する再考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の課題名にあるような多軌道超伝導の発現機構に関する研究がかなり進められていて、国際会議における発表、論文発表を通じて研究成果の発信もかなり出来ているため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度習得した新手法を用いて「重い電子系におけるs波超伝導」に関する再考察をさらに推し進め、論文発表、国際会議発表を行っていきたいと考えている。
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