2013 Fiscal Year Annual Research Report
細菌細胞が非分裂条件下で生きのびる機構とエネルギーの関係
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11J06231
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
菅野 菜々子 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非分裂条件 / 栄養源飢餓生残 / 光合成細菌 / 代謝動態 / 遺伝子発現 / メタボローム / トランスクリプトーム |
Research Abstract |
【研究目的】細菌は自然生態系の中で分解者・生産者という重要な役割を担っている。自然環境中では栄養資源の量が変動するため、栄養源が豊富な時には細菌は分裂増殖し、それ以外の期間は分裂しない状態で生きのびていると考えられる。しかし非分裂条件下で、細菌細胞が生きのびるために必要なエネルギー量や何にエネルギーを使用しているのかの詳細はよくわかっていない。本研究では細菌の非分裂条件下での生存機構をエネルギー(ATP)との関係から明らかにするために、光エネルギーからATPを獲得できる光合成細菌を利用して非分裂条件下でATPを消費している生理活性とATP維持に関わる細胞状態を特定する。 【平成25年度研究計画】25年度は、これまでの研究で紅色光合成細菌の中でも非分裂条件下・暗条件および浸透圧・熱ストレス条件下で生存性が高いことがわかっているRhodopseudomonas palustris CGA009株を材料として、 非分裂条件下・生子性の異なる細胞の網羅的転写角析、非分裂条件移行過程における代謝動態、 非分裂条件下でのATP生産能力解析を行った。 【25年度研究成果】非分裂条件下でのATP生産能力解析から、非分裂条件下では光の有無にかかわらず光合成によるエネルギー獲得能力を維持しており、非分裂条件下で生き残るために光合成をエネルギー源として頼りにしている可能性が示唆された。暗条件でも他の細菌種に比べて生存性の高かったR. palustrisでは非分裂条件下での代謝・転写状態はエネルギー供給量によって大きく異なり、エネルギー供給のあるときはタンパク質回転が積極的に行われていると示唆された。一方でエネルギー供給量が制限される条件では供給量の高いときとは異なる代謝・転写状態であり、非分裂条件を生きのびるための生存機構は細胞内のエネルギー量によって異なる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に予定していた網羅的遺伝子解析において成果を得ることができた。非分裂条件下での細胞のエネルギー状態によって遺伝子発現は異なっており、生存戦略とエネルギーには深い関わりがある可能性が示唆された。また光と細胞内エネルギーとの関係を詳細に解析することに成功し、非分裂条件下でのエネルギー状態についての理解を深化できた。このように、生存性・生存戦略とエネルギー状態について新しい知見を得ることができた。以上から、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度で本研究課題は終了となる。 今後は、これまでわかってきたことを報告・吟味するために論文にまとめる。 24年度までに明らかとなった種間での生存性の違い、25年度までに明らかになった非分裂条件下での代謝動態、遺伝子発現状態について、それぞれ論文としてまとめ、発表する予定である。 本研究課題終了後の研究としては、より詳細な遺伝子解析を行い非分裂条件下での生存性に大きく関与する遺伝子をさらに絞り込んで特定する予定である。今回は長く生存する細菌種を用いたが、短命な細菌種についても非分裂条件下での生理状態を解析することで、非分裂条件下での生存性とエネルギーの関係についてより追求できると考えている。
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Research Products
(3 results)