2011 Fiscal Year Annual Research Report
津波石ハマサンゴを応用した複合的アプローチによる古災害および古環境の高精度復元
Project/Area Number |
11J06232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒岡 大輔 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 津波 / 津波石 / サンゴ / 琉球列島 / 放射性炭素年代 / 明和津波 / 小氷期 / 海水温 |
Research Abstract |
本年は主に、1琉球列島に広範囲に分布する津波石ハマサンゴサンプルの大量採取、2採取した津波石ハマサンゴサンプルの年代測定およびその解析、3過去に石垣島から採取された長尺サンゴ試料の骨格中のSr/Ca比測定による古水温の復元、の3つについて重点的に行った。以下に詳細をそれぞれ記す。 1、2011年6月には宮古島・下地島に調査に行き、また2011年8月には八重山諸島の西表島・波照間島・黒島・石垣島に調査にいき、津波石の分布状況の把握と、サイズ計測を行った。また広範囲から津波石ハマサンゴ試料の大量サンプリングを行った。採取した試料は、今年度とそれ以前の調査を合わせて約200個にのぼり、今後順次変質の有無の確認および年代測定を行っていく予定である。 2、以前に採取された試料から、約100個の津波石ハマサンゴ試料について^<14>C年代測定を行った。その結果、広範囲から採取された大量の津波石が1771年に発生した明和津波起源であることを明らかにした。また、大量の年代測定結果を統計学的に解析することで、2500年以上前から現在までに、1771年の明和津波を含め、南琉球列島に複数回の津波が襲来していた可能性があることがわかった。特に、この地域ではおおよそ150年から400年の周期で津波が襲っている可能性があることも明らかになった。この結果は、東北地方太平洋沖地震による大津波が発生した現在では、一般に向けても関心が高い内容であるため、2011年6月12日の読売新聞朝刊でも紹介されるなど、広く周知される結果となった。 3、1998年に石垣島から採取された、1590年頃から約195年分を有する長尺化石サンゴコア試料について、1680年頃から約100年にわたる古水温の復元をSr/Ca比-水温関係式を用いて約2週間~1ヶ月の解像度で行った。この結果は現在解析中であり、追加で必要な分析を検討している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、琉球列島における津波石ハマサンゴ試料の大量採取と、放射性炭素年代測定による年代値の大量算出、サンゴ骨格分析による小氷期における海水温の復元を行うことを研究目的に設定していた。結果、昨年度までに200個近くの津波石ハマサンゴ試料の採取、放射性炭素年代を100サンプルほど行い、南琉球列島における過去の津波履歴の推定を行うことができた。また、石垣島において1680年から1780年までにおよぶ過去100年ほどの古水温をサンゴ骨格分析から復元することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在までに行ってきた結果をもとに分析・解析や考察を追加していき、順次国際誌に結果を投稿していく予定である。具体的には下記の通りである。 まず、津波石ハマサンゴの放射炭素年代測定結果を増やしていき、琉球列島における過去の津波履歴の詳細を明らかにしていく。申請時点では、海外機関でのU/Th年代測定による高精度年代決定を行う予定であったが、予算の都合もあるため、現時点では実現可能性は低い。もし高精度U/Th年代が測定できなかった場合でも、今年度開発した放射性炭素年代の解析方法で過去の津波履歴を追うことが十分できることも明らかになったので、放射性年代測定を行うことで代用する。また、サンゴ骨格分析を利用した古水温復元に関しては、結果を先行研究と比較することで考察していき、現在の100年分を超えるさらなる年代の延伸を行っていく予定である。
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